1971年度ヒューゴー・ネビュラ賞特集の第1部である。解説で伊藤典夫が、両賞の重複受賞が多く、賞が連立することの意味がなくなったとの感じがあると書いているが、この年度などはその最たるもの。
今の日本では少なくとも、こういう心配はいらないだろう。日本のSFの賞といえば、星雲賞と日本SF大賞だ。ヒューゴー賞が星雲賞、日本SF大賞がネビュラ賞に相当するのだろうが、日米でその性格が違う。星雲賞はヒューゴー賞と同じく年次SF大会参加者の投票で決まるが、日本SF大会の参加者数は1000人かせいぜい2000人といったところだろう。その中で星雲賞に投票する人は何人いるだろうか。小生もSF大会には参加したことは何回もあったが、星雲賞に投票したことはなかった。小生の同行者も投票した人はいなかった。投票してもなんのメリットもないし、権威ある賞に与しているという喜びも感じられない。ようするに賞としての魅力がない。
日本SF大賞は、単行本しか対象としていない。また活字だけではなく映像作品も選ばれることがある。ネビュラ賞とは意味合いが違う。
あと、日本のSFの基準としては早川書房の「SFが読みたい」のランキングがあるが、これも「あまり読んでいないんですが」と言い訳しつつ選考にあたっている選考委員が多い。かようなモノが信頼に足るランキングといえようか。日本のSFの権威ある賞が望まれる。
それでは個々の作品を見て行こう。
「ゆるやかな彫刻」ヒューゴー中編賞、ネビュラ短編賞。ラブストーリー。ガンの女と発明狂の男が出会う。男、静電気でガンを治そうとする。
「岩の中にいるもの」ヒューゴー長中編第2席、ネビュラ長中編第2席。ダニエルズは「岩の中にいるもの」とコミュニケーションがとれる。「そいつ」は太古の昔からそこにいる。
「完全無欠な貴橄欖石」ネビュラ短編候補。形而上学的SF。よーわからんが、ラファティである。ラファティとしかいいようがない。
以上3篇がヒューゴー・ネビュラ賞特集。このたび読みなおしたが、3篇ともさして面白くはない。
「ポルノ騒動」特集の3篇よりこっちの方が面白かった。ま、「賞」なんてもんはそんなもんかいのう。お話はスケベの基準はさまざまということ。
「明日より永遠に」(後篇)近未来アクションSFの後篇。記憶をなくした男が敵を追い詰める。この敵の正体とは?ま、たいていの人は敵の正体はお判りになる。
「幕末怪刀陣」今回の主人公は坂本竜馬。竜馬も「ヒ」だった。そして竜馬の祖先は明智。そういえば明智光秀の居城は坂本城だった。そしてなんと、近藤、沖田といった新撰組の幹部も「ヒ」だった。少し「ヒ」がインフレ気味になって来た。
この号の「ファンジン・パトロール」では、わが星群が紹介されていた。星群2号の写真が掲載されている。
(2013.7)