1971年度ヒューゴー・ネビュラ賞特集第2部である。ライバー、ラファティ、ウルフとクセ者ばかり3人ならんだ。
「凶運の都ランクマール」ヒューゴー賞長中編賞、ネビュラ賞長中編賞。煙霧濃い大都市ランクマールで二人の剣士が出会った。パワーと巨躯のファファード、技とスピードのマウザー。この二人が「盗賊結社」に挑む。西洋チャンバラ。チャンバラ小説としては面白いがSFとしてはいかがなものか。
「つぎの岩につづく」ヒューゴー賞短編第2席、ネビュラ賞中編第2席。石灰岩の台地の煙突岩。岩盤におかしげな文字が。何が書いてあるんだか。ラファティはなんにも教えてくれない。読者が勝手に想像せえということ。
「デス博士の島その他の物語」ネビュラ賞短編第2席。ママと暮らすキミはデス博士と知り合った。キミの家はセトラーズ島にある。の〜んびり、ゆったりSF。
「どんがらがん」この作品はヒューゴー、ネビュラ賞特集とは別ワクでの掲載。超兵器「どんがらがん」をひっさげて各国を脅してまわる連中。こいつらは「どんがらがん」の呪法を身につけている上に、まんの悪いことにこいつらはアホだ。
海外勢4作はなんだか国書刊行会みたいになってしまった。こやつらを迎え撃つ国内勢は半村良一人が務める。
「時空四百歳」第1話「神変ヒ一族」で、信長の比叡山焼き打ちの業火からタイムスリップした飛稚。着いた所は、また業火の中だった。昭和20年、B29の東京大空襲のさなかだった。飛稚は「ヒ」の能力を使って、戦災孤児を助け、孤児たちの自助コロニーを創り上げる。
連載「サイエンス・ジャーナル」はオリンピックを話題にしている。この年はミュンヘン・オリンピック。筆者の加藤喬が執筆中は、パレスチナ・ゲリラのイスラエル選手団襲撃事件は起ってない。校了間際に事件発生。編集部が記事末尾にコメントを入れている。
オリンピックは曲がり角といわれていたが、最初の大きなカーブはこのミュンヘン五輪、次のカーブは大赤字を出したモントリオール五輪、そして今の道に至るカーブが民活を導入して黒字を出したロスアンゼルス五輪ではないだろうか。そして今や五輪はもうかるコンテンツとして大人気。スポーツの祭典ではなく、一大エンタティメントのショーと化した。
(2013.8)