この号には特集企画はない。ごく通常の号である。こういう号の方が、いろんな作品が読めて小生は好きである。7本の読み切り短編のうち国産3本、海外産4本。バランスもいい。
「産霊山秘録」これでこのシリーズは完結。「ヒ」は世界中におる。「シンの山」は世界各国の主要な都市には必ずある。「ヒ」のネットワークは日本国内だけではなく、全地球的なのだ。そして飛稚は月にまで行った。そこで見た。アレを。
「水星に太陽が」探検隊が水星に着陸。二等航宙士カーティスは自殺願望にとらわれている。探検隊に不可解な事態がひんぱんに起る。
「追憶売ります」映画「トータル・リコール」の原作。いずれが夢かウツツか幻か。いかにもディックらしいどれが現実か判らん、足元がグラグラするような作品。上方落語でいえば「天狗裁き」かな。
「遂行への指令」ミュータント同士の接触は難しい。あの人はミュータントに違いないと判っていても、その人が女性の場合、下手に接近するとストーカーに間違われる。
「最高兵器」オチのあるショートショート。博士が未来の兵器を完成させた。ものすごい兵器だ。その兵器とはなんだ。なるほど、こう来るか。小生なら別のオチにする。
「幻覚の地平線」田中光二のデビュー作。ヒッピーたちが治外法権的コミューンを創って自給自足の生活をしている。その中で異変が。主人公の交易屋が調査を依頼される。後に田中光二の道中記モノといわれるように、この作品もこっちからあっちへ移動する。田中光二らしいスタイリッシュな文体はこの作品から確立している。このデビューから四年後小生は田中光二ご本人にあった。
「白い環」対面に大鏡面を持つ崖の街ソルティ。ゴルドハはしがない水売り。一念発起トカゲ捕りの狩人に転職。成功する。ある日美しき貴婦人に招待される。その女性、女皇から告げられる。この世界のことを。この世界ゴンドワナのことを。
早川書房SF刊行満十五周年記念企画として、SF三大コンテストの募集を始めている。小説、漫画・劇画、アートの3部門。選考委員がなんとも豪華、かつ今では考えられない面子。
小説 小松左京 星新一 筒井康隆 石川喬司、福島正実
漫画 手塚治虫 石森章太郎 小野耕世
アート 真鍋博 武部本一郎 野田宏一郎
このコンテストで、どういう人が出てきたかは、結果発表の号を紹介する時に書く。
(2013.9)