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SFマガジン思い出帳 第78回

雫石 鉄也







1973年1月号 No.168


掲載作

縹渺譚 大利根架二郎の奇妙な身ノ上話 
今日泊亜蘭
やわらかな窮地
野口幸夫訳 ブライアン・W・オールディス
光 
石川仁美訳 ポール・アンダースン

アクナル・バサックの宝
水戸宗衛
幻覚の地平線(後編) 
田中光二

現代宇宙詩シリーズ(5)
月のしずく
矢野徹訳 ジョン・ウェイン
劇画ノベル
新・幻魔大戦 第3章 超能力者の血6
平井和正 石森章太郎
大河漫画
鳥人大系 第11章 ポロロ伝(その4)
手塚治虫
新連載よみもの
日本SFこてん古典 第1回 理科読本 炭素太功記
横田順弥
SFスキャナー
何のために
川又千秋

 この号から表紙のイラストレターが代わった。前号まではソ連のアンドレイ・ソコロフのイラストだったが、この号から角田純男に代わった。ソコロフがいかにもソ連の空想科学天文画家と感じだったが、角田に代わって、急に現代的になった。
 さて、横田順弥の「日本SFこてん古典」が始まった。日本古典SFの研究は横田のライフワークとなり、40年経った2013年現在も、このSFマガジンで「近代日本奇想小説史」を連載している。
 この号の掲載作は5編。海外が2編。オールディス、アンダースンという英米のクセ者二人。国産が3編。今日泊、水戸、田中という長老、謎の作家、新人というバランスの取れた布陣。
「縹渺譚」今日泊独特の表記による古典的文字使いの作品。一人の孤児が時空をさまよう。今日泊表記になれてきたら、独特のムードを楽しめるが、少々読みにくいことは読みにくい。タイトルの文字を表示するのにひと苦労。
「やわらかな窮地」「自分が自分を殺す」自我は分裂、世界は分断。進歩することが正しいか?
「光」米ソ対立の冷戦時代。月着陸一番乗りを競う。そして、月面到着。そこで意外なものを見た。
「アクナル・バサックの宝」惑星ギメルは銀河最悪の惑星。住人は悪人ばかり。殺人さえ金で合法化できる。実はこの星、希少金属ギメライトの塊。この星そのものが宇宙一の財宝だ。作者の水戸宗衛はある作家のペンネーム。正体はハンソンさん。
「幻覚の地平線」後編。「共和国」の住人は超能力を持っていた。合衆国政府はそれが許せない。彼らに「核」を打ち込む。しかし、彼らは旅立った。ニルバーナへ。
 この年、早川書房がSF刊行事業15周年を迎えた。
(2013.10)
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