毎年吉例。新春日本SF作家総特集。この号は14人14編。これが当時の日本SF界オールスターではないだろうか。半村良はエッセイで登場。これはたぶん手塚治虫が「鳥人大系」の原稿をオトした穴埋めではないか。この号には「鳥人大系」は載ってない。
「失われた結末」10歳のお兄ちゃんが行方不明。見知らぬ老人が現れて、自分が兄だという。その老人は危険なモノを持っていた。タイムパラドックスもの。
「“女狼リツコ”」ウルフガイ・シリーズ番外編。最強のスケバンリツコは「山本明」なる少年がどうしても気になる。狼の臭いのするその少年が。
「両面宿儺」飛騨高山。かってヤマトに抵抗したスクナさまがいた。日本土着の象徴スクナさまが。敗戦後なんでもアメリカナイズされた日本にスクナさまが異を申し立てる。
「噫々レムリア」アトランティス滅ぶ。第二皇女、臣下の青年と時空を超えてレムリアに逃げる。二人は世界の始祖となる。
「遥かなる真昼」司政官シリーズ第2作目。惑星ネネギンの司政官オキ。原住民ネネギアがレーザー発生装置を貸してくれといってきた。ネネギアは非常に優れた改革者だった。
「デマ」フローチャート小説。「戦争」はどうして始まったか。QC活動やった人ならおなじみの手法。
「まわれ右」時間逆行ネタ。
「勝軍明王まいる」光瀬のタイムパトロールもの。神域の山の入山権をかけた試合を村人がする。双方の村は、剣術の心得のある浪人を試合に出す。
「エラスティック惑星」その星は惑星全体が一個の電子パーツだった。
「メタセコイア」街の博物誌シリーズ1作目。街の真ん中に木の芽が出た。メタセコイアの苗になった。その木を見守る一家がいる。
「能力」なぜか判らぬが砂漠をさまよっていたら、おでんを持ったチビ太が現れた。
「メシメリ街道」彼女の家に行くにはこの道を越えなければならい。ところが、どうしても越えられない。なぜだ。なぜこの道が越えられないのだ。
「モンテカルロ法」その老婆はルーレット百発百中。
「自殺クラブ」自殺するクラブではない。自殺を鑑賞するクラブ。
と、まあ実に盛りだくさん。つゆだくてんこもりの号であった。満腹満足。
(2013.11)