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SFマガジン思い出帳 第81回

雫石 鉄也







1973年4月号 No.171


掲載作

時の葦船
荒巻義雄
メールシュトロームU 
石川智嗣訳 アーサー・C・クラーク
冬の蠅
野口幸夫訳 フリッツ・ライバー
大使館
関口幸男訳 ドナルド・A・ウォルハイム
奈落の底から
深見弾訳 エムツェフ&パルノフ
クリスタル
峰岸久訳 セーウェル・ガンソフスキー
伝道の書に捧げる薔薇
峰岸久訳 ロジャー・ゼラズニイ
劇画ノヴェル
新・幻魔大戦 第4章 魔人・正雪(2)
平井和正 石森章太郎
大河漫画
鳥人大系 第12章 ミュータント
手塚治虫
SF論壇
前進と上昇(後編)
福島正実訳 ジェラルド・ジョナス
日本SFこてん古典 第3回
おとぎ歌舞伎とSF詩
横田順彌
SFコミックスの世界(第27回)
続・スピリット
KOSEI

続・絵筆の幻視者フィンレイ
現代宇宙詩シリーズ(8)
未知の岸辺に
矢野徹訳 D・M・トーマス
使命
矢野徹訳 レスリー・ノリス
膨張する宇宙
矢野徹訳 ノーマン・ニコルソン
SFスキャナー
ファーマーの「リバーワールド」
浅倉久志

大伴昌司氏の死を悼む

 この号の柱は2本。荒巻義雄の「時の葦船」とロジャー・ゼラズニイの「伝道の書に捧げる薔薇」両方とも、両作家の短編の代表作といっていいだろう。
「時の葦船」荒巻がこの時分に書き続けていた「白亜シリーズ」の5作目。羊飼いの少年が長者の娘と知り合う。長者の家に不思議な壁がある。その壁には「夢」の映像が映る。この「白亜シリーズ」も、この作品で終わり。
「メールシュトロームU」月から地球への帰還に、月面から発射カタパルトを使用。ところがわずかな誤差により月の重力圏から脱出できない。月面衝突か。
「冬の蠅」ゴットフリート・ヘルムート・アドラーは自宅でくつろいでいる。妻も子もそれぞれ好きにしている。ところがゴットの前に黒いモノどもが・・・。
「大使館」探偵は火星人のアジト探しの依頼を受けた。ニューヨークに火星人がいるのか?そして依頼人の正体は?
「奈落の底から」船の外は「無」「無」だ。ともかく「無」だ。何も無い。真空すら無い。「無」だ。船の外に出たらどうなる。
「クリスタル」こっちの世界とあっちの世界(反世界)を結ぶクリスタルがある。クリスタルをこっちから押すとあっちに出てくる。
 この「奈落の底から」と「クリスタル」はソ連作家の作品。ソ連東欧のSFも英米とは違った味わいで楽しい。もっと紹介されても良かったのでは。
「伝道の書に捧げる薔薇」滅び行く火星人たち。その火星人の運命は、伝道の書を持った主人公の手に託された。
「幻想と怪奇」創刊号の広告が載っている。創刊号は魔女特集。そういえば、あのころそんな雑誌があったな。まともに読みはしなかったが毎号買っていた。
 大伴昌司が亡くなった。映画紹介ページ「トータルスコープ」を長年にわたって担当していた。また、少年マガジンの愛読者だった小生にとっては、おなじみの名前である。小松左京が告別式で弔辞を述べ、石川喬司、半村良、星新一、筒井康隆、小野耕世、矢野徹、福島正実、平井和正たちが追悼文を寄せている。 

(2014.1)
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