この号の柱は2本。荒巻義雄の「時の葦船」とロジャー・ゼラズニイの「伝道の書に捧げる薔薇」両方とも、両作家の短編の代表作といっていいだろう。
「時の葦船」荒巻がこの時分に書き続けていた「白亜シリーズ」の5作目。羊飼いの少年が長者の娘と知り合う。長者の家に不思議な壁がある。その壁には「夢」の映像が映る。この「白亜シリーズ」も、この作品で終わり。
「メールシュトロームU」月から地球への帰還に、月面から発射カタパルトを使用。ところがわずかな誤差により月の重力圏から脱出できない。月面衝突か。
「冬の蠅」ゴットフリート・ヘルムート・アドラーは自宅でくつろいでいる。妻も子もそれぞれ好きにしている。ところがゴットの前に黒いモノどもが・・・。
「大使館」探偵は火星人のアジト探しの依頼を受けた。ニューヨークに火星人がいるのか?そして依頼人の正体は?
「奈落の底から」船の外は「無」「無」だ。ともかく「無」だ。何も無い。真空すら無い。「無」だ。船の外に出たらどうなる。
「クリスタル」こっちの世界とあっちの世界(反世界)を結ぶクリスタルがある。クリスタルをこっちから押すとあっちに出てくる。
この「奈落の底から」と「クリスタル」はソ連作家の作品。ソ連東欧のSFも英米とは違った味わいで楽しい。もっと紹介されても良かったのでは。
「伝道の書に捧げる薔薇」滅び行く火星人たち。その火星人の運命は、伝道の書を持った主人公の手に託された。
「幻想と怪奇」創刊号の広告が載っている。創刊号は魔女特集。そういえば、あのころそんな雑誌があったな。まともに読みはしなかったが毎号買っていた。
大伴昌司が亡くなった。映画紹介ページ「トータルスコープ」を長年にわたって担当していた。また、少年マガジンの愛読者だった小生にとっては、おなじみの名前である。小松左京が告別式で弔辞を述べ、石川喬司、半村良、星新一、筒井康隆、小野耕世、矢野徹、福島正実、平井和正たちが追悼文を寄せている。
(2014.1)