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SFマガジン思い出帳 第82回

雫石 鉄也







1973年5月号 No.172


掲載作

北京交点
野口幸男訳 マイクル・ムアコック
時間機械
山田和子訳 ラングドン・ジョーンズ
創造性の問題
大和田始訳 トマス・M・ディッシュ
砂漠のピラミッド
関口幸男訳 キャサリン・マクリーン
夜の翼
小菅正夫訳 レスター・デル・リイ
逃げる
半村良
ネオンムラサキ 街の博物誌パート3
河野典生
遺跡の風
眉村卓
劇画ノヴェル
新・幻魔大戦 第4章 魔人・正雪(3)
平井和正 石森章太郎
大河漫画
鳥人大系 第12章 ミュータント(その2)
手塚治虫
日本SFこてん古典 第4回
日本月世界旅行譚
横田順彌
SFコミックスの世界(第28回)
世界征服者
KOSEI
思考の憶え描き 1
浮島計画
真鍋博
SFスキャナー
スローターハウス・アメリカ
川又千秋

 この号の特集は「ゲリラ小説特集」と銘打って、忌まわしい「にゅーうぇーぶ」の特集である。まったく、性懲りもなくまたやっていたのである。つるかめつるかめ。「北京交点」「時間機械」「創造性の問題」の3作がゲリラ小説であるとか。いちおう、今回も読んだけど、あいかわらずさっぱり判らん。面白くもなんともない。
 さて、苦痛以外の何物でもない「ゲリラ小説特集」をなんとか読み終えて「夜の翼」にたどり着いた時は心底ほっとしたしだい。やっぱり、ちゃんとした小説はそれだけでありがたい。
「夜の翼」二人の地球人が月面に不時着。一人の月世界人と会う。月世界文明は絶滅の危機に瀕していた。
「砂漠のピラミッド」妻が失踪した考古学者。医者である妻が残した記録を読む。
「逃げる」火事から逃げる。いろんなモノから逃げる。逃げる。逃げる。ともかく逃げる。
「ネオンムラサキ」青いきれいな蝶が頭の上を舞う。どこに行っても蝶が舞う。同じ蝶か。つきまとう蝶。蝶は彼にだけつきまとうのか。
「遺跡の風」司政官カゼタが赴任している惑星タユネインは平和な惑星。なんの問題もない。そのタユネインに司政官候補生と巡察官が来訪することになった。この報が伝えられて前後して、タユネイン各地で幽霊騒ぎ。滅んだ先住民の幽霊を見たと植民者たちが騒ぐ。
 以上、この号の8編。ゲリラ小説の3篇は論外として、「夜の翼」「砂漠のピラミッド」は出来が悪い。面白くない。「逃げる」「ネオンムラサキ」「遺跡の風」は面白かった。この号、日本勢の圧勝である。
 真鍋博のイラストエッセイ「思考の憶え描き」の連載が始まった。第1回は「浮島計画」
「すぺーす・たいむ・あんてな」に「火の気のない加熱器」なるものが紹介されている。IH調理器のこと。ずいぶんたって実現したわけだ。小生、趣味で料理をするがIH調理器はいらない。あんなモノで炒飯はできない。 

(2014.2)
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