5月号は忌まわしき「にゅーうぇ−ぶ」特集だったが、この号は、うって変わって、クラシックSF特集。古き良きSFはやっぱり安心して読める。SFはなんといっても浪漫の香り漂う空想科学小説でなくてはいかん。
「渦動破壊者」「尖塔の怪異」「飢えた密林人」「地底の怪人」の4編のクラシックSFが掲載されている。
「渦動破壊者」宇宙英雄譚。レンズマンシリーズ外伝。原子力の利用は核エネルギー渦動を生み出した。その渦動が多大な被害をおよぼす。なんか今の福島の原発事故を予言しているような。さすがスミス。
「尖塔の怪異」宇宙恐怖神話譚。ラブクラフト神話。摩訶不思議な多くの怪死事件。その中でただ一人生き残っている医師がいる。何者?
「飢えた密林人」超古代英雄譚。王国での権力あらそい。魔法で前大臣をおとしいれる。魔法の代償は美しき女奴隷。女奴隷に恋する若者。
「地底の怪人」秘境探検譚。二人の探検家のところに、ボロボロの男がやってくる。息もたえだえに、はうようにして来た男が語る。恐ろしや恐ろしや。
「満員御礼」エリスンのアイデアストーリー。ニューヨーク上空に異星の宇宙船。宇宙人は毎日素晴らしいショーを見せてくれる。これをネタに金儲けをたくらむ男が主人公。男のたくらみは成功するか。
「魔法の窓」ヤングのショートショート。少女は路上でキャンバスを立てていた。何が描かれていたか?
「その顔はあまたの扉、その口はあまたの灯」金星の海に棲息する巨大魚竜イッキー。金星のプロの釣り師がイッキー釣りに挑む。釣り冒険小説。
「プレリードッグ」重力の代わりに軽力が支配する世界。そこでは空に穴を掘って暮らしている。
この号は、河野の「プレリードッグ」以外は、すべて海外作品。古き良き、サイエンスロウマンス。最新の(当時としては)冒険SF。アイデアストーリー。と、バラエティ豊かな海外勢であった。
この号の「SFでてくたあ」で、小松左京の「日本沈没」がレビューされている。記事の文末に第2部の完成が待ち遠しいと書かれているが、小松と谷甲州の合作で「日本沈没第2部」が上梓されたのは2006年。33年も待たされた。
「日本沈没」小生(雫石)は、眉村さん宅での勉強会へ行く途中、今はなき梅田の旭屋で初版を買った記憶がある。眉村さんも交えて、この本は売れるぞと、みんなで話題にしたのを憶えている。
(2014.3)