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SFマガジン思い出帳 第83回

雫石 鉄也







1973年6月号 No.173


掲載作

渦動破壊者
井上一夫訳 E・E・スミス
尖塔の怪異
関口幸男訳 ロバート・ブロック
飢えた密林人
津川輝一郎訳 L・スプレイグ・ディ・キャンプ
地底の怪人
川口正吉訳 エイヴラム・メリット
満員御礼
浅倉久志訳 ハーラン・エリスン
魔法の窓
伊藤典夫訳 ロバート・F・ヤング
その顔はあまたの扉、その口はあまたの灯
大谷善次訳 ロジャー・ゼラズニー
プレリードッグ 街の博物誌パート4
河野典生
劇画ノヴェル
新・幻魔大戦 第4章 魔人・正雪(4)
平井和正 石森章太郎
大河漫画
鳥人大系 第12章 ミュータント(その3)
手塚治虫
日本SFこてん古典 第5回
日本かく戦えり!
横田順彌
SFコミックスの世界(第29回)
キャプテン・アメリカはふたり!
KOSEI
思考の憶え描き 2
蝶計画
真鍋博
SFスキャナー
ライフスタイル/デススタイル
岡田英明

 5月号は忌まわしき「にゅーうぇ−ぶ」特集だったが、この号は、うって変わって、クラシックSF特集。古き良きSFはやっぱり安心して読める。SFはなんといっても浪漫の香り漂う空想科学小説でなくてはいかん。 
「渦動破壊者」「尖塔の怪異」「飢えた密林人」「地底の怪人」の4編のクラシックSFが掲載されている。
「渦動破壊者」宇宙英雄譚。レンズマンシリーズ外伝。原子力の利用は核エネルギー渦動を生み出した。その渦動が多大な被害をおよぼす。なんか今の福島の原発事故を予言しているような。さすがスミス。
「尖塔の怪異」宇宙恐怖神話譚。ラブクラフト神話。摩訶不思議な多くの怪死事件。その中でただ一人生き残っている医師がいる。何者?
「飢えた密林人」超古代英雄譚。王国での権力あらそい。魔法で前大臣をおとしいれる。魔法の代償は美しき女奴隷。女奴隷に恋する若者。
「地底の怪人」秘境探検譚。二人の探検家のところに、ボロボロの男がやってくる。息もたえだえに、はうようにして来た男が語る。恐ろしや恐ろしや。
「満員御礼」エリスンのアイデアストーリー。ニューヨーク上空に異星の宇宙船。宇宙人は毎日素晴らしいショーを見せてくれる。これをネタに金儲けをたくらむ男が主人公。男のたくらみは成功するか。
「魔法の窓」ヤングのショートショート。少女は路上でキャンバスを立てていた。何が描かれていたか?
「その顔はあまたの扉、その口はあまたの灯」金星の海に棲息する巨大魚竜イッキー。金星のプロの釣り師がイッキー釣りに挑む。釣り冒険小説。
「プレリードッグ」重力の代わりに軽力が支配する世界。そこでは空に穴を掘って暮らしている。
 この号は、河野の「プレリードッグ」以外は、すべて海外作品。古き良き、サイエンスロウマンス。最新の(当時としては)冒険SF。アイデアストーリー。と、バラエティ豊かな海外勢であった。
 この号の「SFでてくたあ」で、小松左京の「日本沈没」がレビューされている。記事の文末に第2部の完成が待ち遠しいと書かれているが、小松と谷甲州の合作で「日本沈没第2部」が上梓されたのは2006年。33年も待たされた。
「日本沈没」小生(雫石)は、眉村さん宅での勉強会へ行く途中、今はなき梅田の旭屋で初版を買った記憶がある。眉村さんも交えて、この本は売れるぞと、みんなで話題にしたのを憶えている。 

(2014.3)
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