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SFマガジン思い出帳 第84回

雫石 鉄也







1973年7月号 No.174


掲載作

内なる殺人者
深町真理子訳 フランク・ハーバート
歴史的事実
豊田有恒
アポロ再び 
高斎正
マインド・ウインド
山野浩一
おじいちゃん
中村能三訳 ジェイムズ・H・シュミッツ
神よ、あなたの御手に
船戸牧子訳 レスター・デル・リイ
待機ねがいます
浅倉久志訳 ロン・グーラート
いつの日か
石川智嗣訳 アイザック・アシモフ
劇画ノヴェル
新・幻魔大戦 第4章 魔人・正雪(5)
平井和正 石森章太郎
大河漫画
鳥人大系 第12章 ミュータント(その4)
手塚治虫
日本SFこてん古典 第6回
続・日本かく戦えり
横田順彌
SFコミックスの世界 最終回
美しき夢見る人
KOSEI
思考の憶え描き 3
気球計画
真鍋博
SFスキャナー
エロスはすべて子供たちのもの
団精二

 先号6月号はクラシックSF特集、先々号5月号はにゅーうぇーぶ特集だった。この7月号は別段特集企画は組まれていなかった。雑誌にはこういう号も必要だ。特集をやると、その企画に興味のある読者はいい。しかし、興味のない企画なら、読むのに苦痛だ。例えば、小生は「にゅーうぇーぶ」は嫌いだ。このたび5月号を読み直したが苦痛だった。たぶん41年前も苦痛だったと思われる。そんなに嫌なら読まなければいいと思うが、SFマガジンは当時も今も定期購読してるから、早川書房から自動的に送って来る。金だして送ってもらっている雑誌だから、読まないというのはもったいない気がする。貧乏性のなせるワザである。
 さてこの号は8篇の読みきり短編が掲載されている。これぐらいの数の短編は載せてもらいたいものだ。最近のSFマガジンは読みきり短編の数が少なくていかん。
「内なる殺人者」人間にとりつく生命体。宿主が年老いれば使い捨て。次々、宿主替えて生きのびてきたが、とうとう年貢の納め時が。
「歴史的事実」西欧化の最先端を行くファッションカメラマン。ある古墳の前でモデルを撮影。ところがどうしてもシャッターが押せない。日本人としてのアイデンティティーか。
「アポロ再び」1969年のアポロ11号月着陸以来、70年代の宇宙開発は停滞していた。宇宙マニアの日本人二人、中古のICBMを買って、クラシックアポロ宇宙船で月に観光に行く。
「マインド・ウインド」主人公は外回りの営業マン。地方への出張多し。その主人公が、無目的に人々が集まって散歩する散歩族と遭遇する。
「おじいちゃん」惑星評議員を筏に乗せて案内した。筏は生き物で、おとなしい植物動物だが、なぜか突然、暴走しはじめた。
「神よ、あなたの御手に」人類は滅びた。人類の文明の記憶を持ったロボットが地上に出て「人間」を創造しようとする。
「待機ねがいます」日本には狐憑きや狸憑きがあるが、この男に取り憑いたのは象だった。象憑き男はなんの役に立つのか。
「いつの日か」バードはしゃべり続ける。その円筒記憶媒体に貯めこまれた言葉語彙お話のストーリーを組み合わせて。人間は文字も数字も忘れた。
 前回83回で、小松左京の「日本沈没」が「SFでてくたあ」でレビューされ、小生(雫石)たちが眉村さん宅の勉強会で、これは売れるぞと話題になったことを書いたが、この号の同欄にて同作がベストセラー1位になったと記されている。ちなみに2位は安部公房「箱男」4位は広瀬正「タイムマシンの作り方」SFがよく売れていたのだ。

(2014.4)
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