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SFマガジン思い出帳 第88回

雫石 鉄也







1973年10月臨時増刊号 No.178

掲載作

タイム・ジャック 
小松左京
出帆旗、宜候
光瀬龍
白村江
豊田有恒
死はわが職業
田中光二
金の粉
星新一
火星ノンストップ
風見潤訳 ジャック・ウィリアムスン
火星からの使者
団精二訳 スタントン・A・コブレンツ
宇宙の反乱者 
柴野拓美訳 ロイド・A・エシュバック
人生の部屋
野口幸男訳 G・P・ワートンベイカー
宇宙の方舟 
岡田芙訳  ジョン・コットン
キャプテンたずねて三光年
野田昌宏

 毎年吉例臨時増刊号である。「秋のワンダー・デラックス号」と称して、日本勢5篇。海外勢5篇。同数互角がっぷり四つである。これに行司役として野田さんのエッセイのようなブックガイドのような小説のような作品がつく。これに加うるに、オカルト・エッセイが6篇掲載されている。なんとも盛りだくさんであった。
「タイム・ジャック」筒井康隆の「日本以外全部沈没」への返礼作品。ゴルフ場から風俗のお店まで、街全部を搭載した観光用巨大航時機。その航時機がタイム・ハイジャックされた。これはマジかアトラクションか?小松左京が筒井康隆のマネをしてドタバタコメディを書いた。
「出帆旗、宜候」おれはスペースマン。仕事はないが引退したつもりはない。若い者がサイボーグにあこがれている。おれもサイボーグだ。光瀬節が堪能できるサイボーグもの。 
「白村江」白村江の戦いで日本は負けた。飛鳥時代に謎のタイムトラベラー出現。その目的は?正体は?豊田の十八番古代史タイムトラベルもの。
「死はわが職業」元木星探査用サイボーグだった私は宇宙開発局を脱走した。そしてサイボーグ独特の頑健な身体を生かして「殺され屋」を始めた。そんな私にも夢がある。
「金の粉」「なにとぞ、この男に金をもうけさせたまえ」そのとおりになった。金がもうかった。男は幸運まみれになった。
「火星ノンストップ」全世界をおおう異常気象。人類の危機。火星人の陰謀だ。主人公は人類を救うため愛機に乗って火星をめざす。ガソリンで飛ぶレシプロ機の愛機で。
「火星からの使者」全地球的な電波障害。ラジオもテレビも視聴に影響が。これを火星人のしわざと見破った博士。だれも知らないがこの博士こそ人類を救った大偉人だ。
「宇宙の反乱者」木星に流刑になった反政府活動家。船を奪って脱走。ところがこの船は燃料が不足。大型船強奪を図る。
「人生の部屋」目覚めたら湖の中だった。私はだれ?ここはどこ?なんとか湖から上がると、そこは驚異に満ちた世界だった。
「宇宙の方舟」太陽超新星化。天才科学者が脱出用宇宙船を建造。乗員募集。乗員は集まることは集まったが烏合の衆。リーダーの科学者は独裁的手法で船の運営をするが。
「キャプテンたずねて三光年」キャプテン・フューチャーが行方不明。ノダ大元帥が捜索に乗り出す。その途中、さまざまはスペオペのヒーローたちが大元帥一行に加わる。野田昌宏の「SF英雄群像」のダイジェストおさらい版。
 以上、11篇にオカルト・エッセイが6篇。さすがに読みでがある。ところで、ご覧のように表紙のイラストは生頼範義である。生頼範義の表紙というと、どうしてもSFアドベンチャーの印象が強い。SFマガジンの表紙も生頼範義は描いていたのだ。

(2014.8)
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