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SFマガジン思い出帳 第89回

雫石 鉄也







1973年11月号 No.179

掲載作

ヴァチカンからの吉報 
浅倉久志訳 ロバート・シルヴァーバーグ
失踪した男
深町真理子訳 キャサリン・マクリーン
亜空間要塞 第3部
半村良
直立猿人 街の博物誌パート8
河野典生
生なきもの 
石川智嗣訳 ジョン・ブラナー
最後の狩猟
田中光二
大河漫画
鳥人大系 第12章 ファルコ・チンヌンクルス・モルツス(その1)
手塚治虫
連載SFエッセイ
ロン先生の虫眼鏡 第3回 虫の心と女の心
光瀬龍
連載評論 幻想小説の方へ 
夢の言葉・言葉の夢 第3回 言葉でないもの
川又千秋
日本SFこてん古典 第8回
明治の三大冒険雑誌
横田順彌
思考の憶え描き 連載7
軟体計画 
真鍋博
SF論壇
宇宙の人形師(下) フィリップ・K・ディック論
浅倉久志訳 デヴィッド・エルワード
SFスキャナー
狼の冬・月の塵 
風見潤

 1972年度ヒューゴー賞・ネビュラ賞特集の第3部である。まずはその企画の作品から。
「ヴァチカンからの吉報」ネビュラ賞短篇賞受賞。どうも次期ローマ法王にロボットが選ばれそうだ。シルヴァーバークは発達したロボットの有能さをいいたいのか、バチカンの権威主義を批判したいのかどっち?
「失踪した男」ネビュラ賞長中篇受賞。海中ドームでコンピュータ技師が誘拐された。技師は都市のメンテナンスを司るコンピュータを担当している。事件解決にあたるのが若き超能力刑事。
 この2篇が1972年のアメリカSFベスト短篇であると、当時のかの国のプロたちがいっているわけ。う〜む。いかがなものかという感じ。シルヴァーバークは軽いが面白かった。ところがマクリーンのはどこがいいのか小生にはさっぱりわからなんだ。
「直立猿人」ぼくにはしっぽがある。恋人に別れを告げられた。時、同じくして身体に変化が。お尻のあたりがムズムズすると。医者に行くと尻尾が生えていることが判明。
「生なきもの」インドに「守護聖人」と呼ばれて人々に敬われている老医師がいる。明日引退して下帯だけの裸で、物乞い用の椀と杖だけをもって托鉢に回るという。そのころ先天性精薄児が急増。その調査にこの地を訪れたWHOの若い医師は聖人に会う。
「最後の狩猟」人口爆発。アフリカの野生動物はすべて食糧となった、生き残りと思われる象がマサイの村を襲った。象退治を依頼された老ハンター。「幻覚の地平線」でデビューしたばかりの田中光二が、このあたりから毎号のように登場。新人作家として一生懸命育てている。
「ロン先生の虫眼鏡」ジガバチにもアホやカシコがいるということ。
「世界みすてり・とぴっく」でユリ・ゲラー(ユーリー・ゲラーと表記)を紹介している。手品師ではなく超能力者としての紹介である。
 なお、この号の「てれぽーと」欄に星群の会会員募集の広告が掲載されている。

(2014.9)
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