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SFマガジン思い出帳 第9回

雫石 鉄也







1968年2月号 No.104

 今は通常の月と同じだが、昔のSFマガジンは2月号は特別だった。N周年記念特別増大号と称して、頁数を増やした号を発行していた。
 表記は2月号だが、発売は12月。その年の最後に出るSFマガジンが一番厚い号というわけ。もう一冊、臨時増刊号を出していたから、通常号より厚い号を年に2冊も発行していた。
 25日に書店にSFマガジンを買いに行くのが毎月の楽しみだが、年の瀬、12月の25日は、いつもの月に増して楽しみだった。その年の最後に出る号が一番分厚く一番充実した号だった。正月に2月号をゆっくり読むのが何よりの楽しみだった。
 さて、この1968年2月号。この連載コラムの2回目で書いたように、小生が初めて買ったSFマガジンは1967年9月号だったが、その2号後に第6回で紹介した臨時増刊号がでているが、ページ数はレギュラーと変わらなかった。と、いうわけでこの2月号は小生が初めて接した増頁のSFマガジンということになる。
 うれしかった。当時はSFを摂取できる媒体は、早川の銀背と創元推理文庫とSFマガジンだけだった。そのSFマガジンがいつもより分厚い。それだけのことでうれしいかった。
 内容は、

偉大なる存在小松左京
筒井康隆
イリュージョン惑星石原藤夫
貝殻の歌が聞こえる矢野徹
くたばれ眉村卓
カナン5100年光瀬龍
特賞の男星新一
ワム久野四郎
ふかのうくん石川喬司
エスパーお蘭平井和正
アステカに吹く嵐豊田有恒

 他に野田さんのエッセイ。フレッド・ホイルの連載「10月1日では遅すぎる」の第1回。
 この号の人気カウンター。小生は「エスパーお蘭」を1位。「カナン5100年」を2位にしていた。
 エスパーお蘭。後に「ウルフガイ・シリーズ」「幻魔大戦」などでファンを熱狂的させた8マンの原作者平井和正の熱いSF。
 カナン5100年。日本SFの青春期に「宇宙」を体感させてくれた、光瀬龍の年号付宇宙SFの典型的な作品。滅び行く種族を情感たっぷりに描いている。ミツセ節が堪能できる。
  

(2008.1)

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