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SFマガジン思い出帳 第90回

雫石 鉄也







1973年12月号 No.180

掲載作

亜空間要塞 (完結篇)
半村良
レボルシオーン5
山野浩一
殺人競技場 
山田和子訳 J・G・バラード
戦車のぶらんこ
野口幸夫訳 マイクル・ムアコック
クリスタル・ルージュ  街の博物誌パート9
河野典生
過去を変えた男 
関口幸男訳 ロバート・F・ヤング
人間オメガ
石川智嗣訳 ロウェル・H・モロウ
大河漫画
鳥人大系 第12章 ファルコ・チンヌンクルス・モルツス(その2)
手塚治虫
劇画ノヴェル
新・幻魔大戦 第4章 魔人・正雪(8)
平井和正 石森章太郎
思考の憶え描き 連載8
螺子計画 
真鍋博
日本SFこてん古典
第9回 えす・えふ版草双紙
横田順彌
SFエッセイ
ロン先生の虫眼鏡 第4回 ああ、この聖なる餓鬼道
光瀬龍
SFスキャナー
冒険世界のアナクロニズム 
団精二
連載評論 幻想小説の方へ 
夢の言葉・言葉の夢 第4回 空まわり分割
川又千秋

 この号は「ゲリラ小説特集」と称して、小生の大嫌いなにゅーうぇーぶの特集である。大和田始の解説で、「発達しながら旧SFを制圧しつつある。ニューウェーブはそれらを追放するためにも闘い続けなけれならないだろう」とあるが、それから、40年経った。旧SFはいっこうに制圧されてないし、闘い続けるもなにも、21世紀の現代、にゅーうぇーぶなんてもう無いのではないか。
「レボルシオーン5」「殺人競技場」「戦車のぶらんこ」の3作が、その「ゲリラ小説」とやららしいが、あいかわらずのひとりよがりで意味不明な小説である。その中でも山野の「レボルシオーン5」は比較的判りやすい。実在の女性ゲリラ、タニア(タマラ・ブンケ)が主人公。この作品が発表された1970年代ならば、タニアやタニアの盟友ゲバラにあこがれ、彼らの革命を熱烈支持していたかもしれない。しかし、21世紀、2000年代になって、ソ連が崩壊し、革命が成功した国、中国、北朝鮮がいかなる国になってしまったかを知った21世紀人たる小生にとっては、こういう感覚は、死んだ子の年を数えるというか、どこにもいない青い鳥を探しているような、なんともむなしいかぎりである。
 さて、「ゲリラ小説」は、このへんでかんべんしてもらって、他の作品を見てみよう。
「クリスタル・ルージュ」 街の博物誌シリーズの9作目。少年は兵士である。少年は初老の男と旅をする。
「過去を変えた男」涙と酒の人生を送っている男は、「おろか者の通り」を歩き続けた。
「人間オメガ」荒廃した地球。最後の男女。ただ一か所残った湖。そこに恐龍の生き残り。生き残った人間と恐龍が水場をとりあう。
 表2の広告は天地真理。このころの天地真理はほんと可愛かった。それがあんな化けもんみたいなおばさんになる。時の流れとは恐ろしや。
「ロン先生の虫眼鏡」この号は、ジガバチの幼虫の食糧事情。光瀬龍のこのエッセイはいい。「ファーブル昆虫記」とは全く違う、生き物の観察日記。
 早川書房SF刊行満15年記念SF三大コンテストの小説部門第一次選考通過作品が発表されている。知っている名前を上げてみよう。
決戦・日本シリーズ かんべむさし
クロマキー・ブルー 川田武
未来記憶      沖慶介(清水義範)
仮面舞踏会     山尾祐子
ソナティネ・永遠のために 南山鳥27・ノーワ
夏の旅人      田中文雄
 う〜む。こうしてみるとなかなかのメンバーだなあ。 

(2014.10)
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