この号は「ゲリラ小説特集」と称して、小生の大嫌いなにゅーうぇーぶの特集である。大和田始の解説で、「発達しながら旧SFを制圧しつつある。ニューウェーブはそれらを追放するためにも闘い続けなけれならないだろう」とあるが、それから、40年経った。旧SFはいっこうに制圧されてないし、闘い続けるもなにも、21世紀の現代、にゅーうぇーぶなんてもう無いのではないか。
「レボルシオーン5」「殺人競技場」「戦車のぶらんこ」の3作が、その「ゲリラ小説」とやららしいが、あいかわらずのひとりよがりで意味不明な小説である。その中でも山野の「レボルシオーン5」は比較的判りやすい。実在の女性ゲリラ、タニア(タマラ・ブンケ)が主人公。この作品が発表された1970年代ならば、タニアやタニアの盟友ゲバラにあこがれ、彼らの革命を熱烈支持していたかもしれない。しかし、21世紀、2000年代になって、ソ連が崩壊し、革命が成功した国、中国、北朝鮮がいかなる国になってしまったかを知った21世紀人たる小生にとっては、こういう感覚は、死んだ子の年を数えるというか、どこにもいない青い鳥を探しているような、なんともむなしいかぎりである。
さて、「ゲリラ小説」は、このへんでかんべんしてもらって、他の作品を見てみよう。
「クリスタル・ルージュ」 街の博物誌シリーズの9作目。少年は兵士である。少年は初老の男と旅をする。
「過去を変えた男」涙と酒の人生を送っている男は、「おろか者の通り」を歩き続けた。
「人間オメガ」荒廃した地球。最後の男女。ただ一か所残った湖。そこに恐龍の生き残り。生き残った人間と恐龍が水場をとりあう。
表2の広告は天地真理。このころの天地真理はほんと可愛かった。それがあんな化けもんみたいなおばさんになる。時の流れとは恐ろしや。
「ロン先生の虫眼鏡」この号は、ジガバチの幼虫の食糧事情。光瀬龍のこのエッセイはいい。「ファーブル昆虫記」とは全く違う、生き物の観察日記。
早川書房SF刊行満15年記念SF三大コンテストの小説部門第一次選考通過作品が発表されている。知っている名前を上げてみよう。
決戦・日本シリーズ かんべむさし
クロマキー・ブルー 川田武
未来記憶 沖慶介(清水義範)
仮面舞踏会 山尾祐子
ソナティネ・永遠のために 南山鳥27・ノーワ
夏の旅人 田中文雄
う〜む。こうしてみるとなかなかのメンバーだなあ。
(2014.10)