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SFマガジン思い出帳 第92回

雫石 鉄也







1974年2月号 No.182

掲載作

狼のレクイエム(第1回)
平井和正
こういう宇宙
小松左京
モダン・シュニッツラー
筒井康隆
黄色い葉
星新一
限界のヤヌス(後編)
眉村卓
さらば、スピードよ
豊田有恒
つぐないの惑星
高斎正
白魔懐胎 新妖幻記・白魔傳控帖 第1回
荒巻義雄
トリケラトプス 街の博物誌パート10
河野典生
さまよえる騎士団の伝説
矢野徹
わが赴くは蒼き大地(前編)
田中光二
くだらない釣り
石川喬司
アマゾン砂漠
光瀬龍
わが子に与える十二章
半村良
殺人者の空
山野浩一
百鬼夜行す
福島正実
大河漫画
鳥人大系 第12章 ファルコ・チンヌンクルス・モルツス(その4)
手塚治虫
ロン先生の虫眼鏡 第6回
孤独な夜の狩り手
光瀬龍
SFスキャナー
サイエンス・フィクションの未来史
デヴィッド・エルワード
日本SFこてん古典 第11回 
たいむましん・いん・じゃぱん
横田順彌
思考の憶え描き 連載10
融合計画 
真鍋博
新春特別企画 完全図解構成
天翔るスターウルフ
野田昌宏&CAS

 2月号恒例の日本作家総出演の特大号。SFマガジンの2月号は12月の25日にでる。だから正月休みの無聊を慰めるのには、この特大号がちょうど良かった。
 さて、この号は16篇16人の日本人SF作家が顔見世興業。73年2月号が14編14人だったから、この1974年版は二人多い。ただ、73年版もそうだが、この74年版も16人全員男性の作家。鈴木いずみはまだデビューしてなかったが、藤本泉はこのころはデビューしている。一人ぐらいは女性作家を入れようと思えば可能であったが、この点が残念なり。
 さて、掲載作を順々に紹介して行こう。
「狼のレクイエム」(第1回)ウルフガイ・シリーズの第3部。このシリーズ、当時は大人気で、作者の平井和正はカリスマ的人気を誇った。今回は、シリーズ中最も大藪春彦的キャラの西条恵が主人公。
「こういう宇宙」銀座のネオン街。バーやクラブが実は宇宙とつながっている。いろんな惑星にワープできるのだ。
「モダン・シュニッツラー」さまざまな立場の男が、さまざまなモノとSEXする。やろうと思えばなんとでもナニができるのだ。
「黄色い葉」死神モノのショートショートだが、星さんの作品にしては難解。
「限界のヤヌス」植民者が独立をめざす。植民地が独立したら司政官はいらないのでは?司政官制度そのものの存在を問う事態が勃発。司政官シリーズの転換点となった重要な作品。
「さらば、スピードよ」30キロ以上のスピードが出せなくなった。人類は自分で走る以上のスピードが出せない。
「つぐないの惑星」宇宙へ出るのが天職。そう思っている彼にとって地球とはなんだったんだ。
「白魔懐胎」小生の記憶に間違いがなければ荒巻義雄初の時代劇。北の地、松前の千軒岳に異変あり。「白い魔物」がいるらしい。白い魔物=白魔とはなにか。この謎に江戸の奇人平賀源内が挑む。
「トリケラトプス」父と子はありえないものを見た。街中をトリケラトプスが歩いている。
「さまよえる騎士団の伝説」ドイツはバイエルン地方に伝わる伝説。閏年の2月29日霧の中から「聖霊の騎士団」が現れる。その騎士団に連れ去られた娘は村には永遠に帰ってこない。
「わが赴くは蒼き大地」「敵」のため地球は大異変。地上には住めなくなった。人類は海中都市でくらす。この危機を乗り越えるため、水中兵士チヒロは一万六千キロ離れた他の海中都市まで行く。途中の海にはDNA操作でつくられた怪物がうようよ。無事たどり着けるか?いかにも田中光二な冒険SF。
「くだらない釣り」インターナショナル・ダービーに全財産を賭けたのは何者?口から釣り糸をたらして回虫を釣る。
「アマゾン砂漠」東キャナル市の退役スペースマン。伝説の「東キャナル文書」の実在を探る。滅び去った火星の先住民に関する文書だろうか。光瀬節を堪能できる。
「わが子に与える十二章」12の詩?民話?半村の文章芸。 
「殺人者の空」大学自治会。対立する組織のスパイKを殺した。ところがKなる人物は存在していない。
「百鬼夜行す」離魂病の女を不良どもから救う。そのことが元で主人公は異世界に迷い込む。
 さすがに、これだけの分量の短編となると、読みでがある。これで600円なのだから、40年前とはいえ安いものだ。
 SF三大コンテスト小説部門の最終候補が発表された。かんべむさし、川田武、沖慶介、山尾祐子、田中文雄といった名前があがっている。
 テレポート欄に筒井康隆が投稿。「NULL復刊のお知らせ」「ネオ・ヌル」のことである。それにともない、1975年の日本SF大会を神戸から立候補することを宣言している。  

(2014.12)
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