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SFマガジン思い出帳 第93回

雫石 鉄也







1974年3月号 No.183

掲載作

狼のレクイエム(第2回)
平井和正
失われし時のかたみ
深町真理子訳 ロバート・F・ヤング
発明の時代
浅倉久志訳 ノーマン・スピンラッド
すばらしい財産
隅田たけ子訳 アイザック・アシモフ
ぶどうの木
沢ゆり子訳 キット・リード
そして目覚めると、わたしはこの肌寒い丘にいた
伊藤典夫訳 ジェイムズ・ティプトリーJr
夢の通り
石川智嗣訳 フランク・M・ロビンソン
白魔懐胎 新妖幻記 白魔伝控帖 その2
荒巻義雄
空についての七つの断章 街の博物誌パート11
河野典生
わが赴くは蒼き大地(後編)
田中光二
大河漫画
鳥人大系 第12章 ファルコ・チンヌンクルス・モルツス(その5)
手塚治虫
SFエッセイ
ロン先生の虫眼鏡 第7回 孤独な狩人たち
光瀬龍
日本SFこてん古典 第12回 
「西遊記」と「東遊記」
横田順彌
連載評論 幻想小説の方へ 
夢の言葉・言葉の夢 第6回 オー・ノォ!
川又千秋
SFスキャナー
他人のほめていた本を読んでみたら
風見潤
思考の憶え描き 連載11
爆弾計画 
真鍋博

 この号は特段な企画も特集もなく、厚さも普通で、ごく通常の号である。連載長編小説は「狼のレクイエム」だけで、あと「白魔伝控帖」も連載だが、これは長編ではなく連作短編だ。こうだから、読み切り短編が8編も掲載されている。通常号ながらお徳感があり読みごたえがある。これに比べて最近の号、例えば2015年1月号は5編しか載ってない。しかもそのうちの3編はタイアップ企画のちょうちん小説。SFマガジンも2015年から隔月刊になるのだから、内容を充実させて欲しい。塩澤現編集長は、この当時の編集長森優氏に教えを乞うべし。
 さて、この号ゆいいつの連載長編「狼のレクイエム」中国の情報機関虎部隊にかくまわれている青鹿晶子が妊娠。相手は犬神明は神明か。虎4が嫉妬。
「失われし時のかたみ」ドアの向こうの窓のない部屋。その部屋の陳列カウンターに並べられているモノの秘密。
「発明の時代」太古の昔から人々はいろんなモノを発明してきた。モノの取引、周旋、芸術、そして文明。
「すばらしい財産」純粋なアンモニウムの分離に成功。ノーベル賞か。欲ぼけどもが集まってくる。アシモフの化学コメディ。
「ぶどうの木」その一家は1本の巨大なぶどうの木を守ることが使命。代々、ぶどうの木の奴隷である。名作ホラー短編である。
「そして目覚めると、わたしはこの肌寒い丘にいた」宇宙船中継駅でのできごと。ティプトリー・Jr初登場。このころはまだ正体は知られてなかった。男性作家と思われていたのでは。
「夢の通り」ロケットにあこがれる少年は「夢の通り」に一人で行く。なんと、この作品の中で回転すしの元祖のようなモノが出てくる。
「白魔誕生」平賀源内の想い人朝霧が産んだ子は五重苦を背負った子だった。その子が異様な能力を発揮し始める。
「空についての七つの断章」街の博物誌シリーズもこれにて完結。
「わが赴くは蒼き大地(後編)」大西洋のバハマ・シティをめざして海の旅を続ける主人公チヒロ。ついに大西洋到達。そんなチヒロたちに巨大な謎の遊泳物体が接近。用心棒シャチのタイタンもいない。どうする?海洋冒険SFも終わるが、ラストはひとひねりしてある。
「ロン先生の虫眼鏡」はフクロウの話。ロン先生、フクロウのヒナを育てる。
 表4は「アテナ ノンシンナーボンド」の広告。そのキャッチフレーズが「大切な子供たちをシンナーの害から守りましょう」なんか、なんにもしてない善良な子供めがけてシンナーが襲いかかってくるんか?じっとしている子供にシンナーに足があって、歩み寄って噛みつくわけではないだろう。この広告、なんか違和感がある。

(2015.1)
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