この号は特段な企画も特集もなく、厚さも普通で、ごく通常の号である。連載長編小説は「狼のレクイエム」だけで、あと「白魔伝控帖」も連載だが、これは長編ではなく連作短編だ。こうだから、読み切り短編が8編も掲載されている。通常号ながらお徳感があり読みごたえがある。これに比べて最近の号、例えば2015年1月号は5編しか載ってない。しかもそのうちの3編はタイアップ企画のちょうちん小説。SFマガジンも2015年から隔月刊になるのだから、内容を充実させて欲しい。塩澤現編集長は、この当時の編集長森優氏に教えを乞うべし。
さて、この号ゆいいつの連載長編「狼のレクイエム」中国の情報機関虎部隊にかくまわれている青鹿晶子が妊娠。相手は犬神明は神明か。虎4が嫉妬。
「失われし時のかたみ」ドアの向こうの窓のない部屋。その部屋の陳列カウンターに並べられているモノの秘密。
「発明の時代」太古の昔から人々はいろんなモノを発明してきた。モノの取引、周旋、芸術、そして文明。
「すばらしい財産」純粋なアンモニウムの分離に成功。ノーベル賞か。欲ぼけどもが集まってくる。アシモフの化学コメディ。
「ぶどうの木」その一家は1本の巨大なぶどうの木を守ることが使命。代々、ぶどうの木の奴隷である。名作ホラー短編である。
「そして目覚めると、わたしはこの肌寒い丘にいた」宇宙船中継駅でのできごと。ティプトリー・Jr初登場。このころはまだ正体は知られてなかった。男性作家と思われていたのでは。
「夢の通り」ロケットにあこがれる少年は「夢の通り」に一人で行く。なんと、この作品の中で回転すしの元祖のようなモノが出てくる。
「白魔誕生」平賀源内の想い人朝霧が産んだ子は五重苦を背負った子だった。その子が異様な能力を発揮し始める。
「空についての七つの断章」街の博物誌シリーズもこれにて完結。
「わが赴くは蒼き大地(後編)」大西洋のバハマ・シティをめざして海の旅を続ける主人公チヒロ。ついに大西洋到達。そんなチヒロたちに巨大な謎の遊泳物体が接近。用心棒シャチのタイタンもいない。どうする?海洋冒険SFも終わるが、ラストはひとひねりしてある。
「ロン先生の虫眼鏡」はフクロウの話。ロン先生、フクロウのヒナを育てる。
表4は「アテナ ノンシンナーボンド」の広告。そのキャッチフレーズが「大切な子供たちをシンナーの害から守りましょう」なんか、なんにもしてない善良な子供めがけてシンナーが襲いかかってくるんか?じっとしている子供にシンナーに足があって、歩み寄って噛みつくわけではないだろう。この広告、なんか違和感がある。
(2015.1)