連載が1本に読み切りが7編。この号も標準的な号である。巻頭言では(M・M)氏が、SF作家の麻雀について書いていた。SF作家の麻雀ほど、和気あいあいとした楽しい麻雀は他に知らないとのこと。
さて、この号の作品を見て行こう。
「狼のレクイエム」先日亡くなった平井和正の代表的人気シリーズである。麻薬ナルコテック800で廃人となった青鹿晶子を救うため、解毒剤を求めて犬神明はCIAに乗り込もうとする。
「このけだるい地上に」シルヴィアだ。リックはみんなシルヴィアに見えてしまう。いかにもディックな作品。
「バシリスク」伝説の巨竜バシリスクがあらわれた。もひとつエリスンっぽくないな。
「ネズミ」一匹のハツカネズミが、宇宙人の地球探査を手伝うために「知能」を与えられた。
「女と子供の委員会」ある母と子が異星人と接触した。いかにもヘンダースンな作品。
「白魔時駕籠」杉田玄白の「解体新書」杉田がこの本を書く時に腑分けを見学した。この時腑分けされた罪人は女だった。平賀源内は若いころその女とあったことがある。ちょうどそのころ源内はある物の発明に没頭していた。時駕籠の発明に。
「太陽神への讃歌」ギリシャはミコノス島沖の海底から発見された壷の中から古い書物が出てきた。解読すると、そこにはアトランティスの物語が書いてあった。それを拾い上げたのは若い日本人の考古学者だった。作品の最後に「エロク・アニム・オス」の祈りの意味を知りたいとの、著者矢野徹から読者への問いかけがある。この問いかけに対する返答があったのかどうか記憶にない。
「紙幣は吹雪のごとく」物価が1万倍。コーヒー一杯90万円。超インフレ。極右政権。141名の少年が虐殺された。少年たちは地下組織を作って抵抗した。そしてテロをしかけた。人が傷つかないテロを。
この藤本泉さん。もっと再評価されてもいい作家だと思う。たぶん、日本で最初に登場した女性の社会派本格SF作家ではないか。鈴木いずみも山尾悠子も、新井素子もいない時代に、藤本泉さんだけはいた。
この号のてれぽーと欄に第1回星群祭の広告が載っている。ショートショート・コンテストもやっていたのだ。
(2015.2)