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SFマガジン思い出帳 第97回

雫石 鉄也







1974年7月号 No.187

掲載作

ボール
半村良
マグワンプ4
浅倉久志訳 ロバート・シルヴァーバーグ
白魔鬼神道 新妖幻記・白魔傳控帖 その6
荒巻義雄
神狩り
山田正紀
大河漫画
鳥人大系 第14章 赤嘴党(その2)
手塚治虫
SFエッセイ
ロン先生の虫眼鏡 第11回 ひれを持つ友、魚たち
光瀬龍
日本SFこてん古典 第16回 
ナポレオン一世日本に死す
横田順彌
連載評論 幻想小説の方へ 
夢の言葉・言葉の夢 第10回 作用について(その3)
川又千秋
SFスキャナー
正義の味方は誰なの?
岡田英明
思考の憶え描き 連載15
時計計画
真鍋博

 この号の掲載作は4編。このうち、連載の白魔傳をのぞくと、読み切りの短編が2編。中編が1編。
 まず、「ロン先生の虫眼鏡」表題でわかるように魚の話である。サメ、ジンベイ、マンボウ、ウナギといった極めて個性的な魚の話題。
「ボール」宇宙からボールがやって来た。どうもなんらかの意志を有しているらしい。道路をゴロゴロと猛スピードで走る。車を破壊して走る。モータリゼーションは崩壊する。
「マグワンプ4」電話したら混線していて、よく判らないところにつながった。で、ハゲの小男に捕まった。異次元の未来に送られることになった。
「白魔呪縄文」平賀源内捕縛される。牢に入れられた。
 「人気カウンター」の欄にお知らせが。現在集計中の9月号分で打ち切り。SFの多様化にともない現状にそぐわなくなったとの理由。確かにさまざまなSFを多人数でランクをつけることによって評価するのはいかがなものかと思う。だったら個人でランクをつけるのはいいだろうと思って、「雫石鉄也ひとり人気カウンター」ということで小生1人でこの企画を拙ブログで今も続けている。
 さて、この号の最大の目玉は山田正紀のデビュー作「神狩り」の一挙掲載。全ページ数232ページのうち96ページを費やしている。この号の約三分の一を使って、新人の300枚の作品を掲載しているわけ。いかに編集部が山田正紀という新人作家に太鼓判を押して世に出したかがよく判る。
「神狩り」については、よく知られた作品であるので、ここでのレビューは割愛するが、ともかく新人らしからぬ出来で、すでに完成された作家の書きっぷりの作品である。
 この山田正紀を見出した「宇宙塵」の柴野拓美さん、世に送り出したSFマガジン編集部の慧眼は見事なもので、山田正紀はその後、SFはいうにおよばず、ミステリー、冒険小説、ホラー、時代劇、エンタティメント小説のあらゆる分野で健筆を振るい続けているのはご存知の通り。
 先にデビューしている、田中光二、堀晃、後にデビューするかんべむさし、そしてこの山田正紀と、日本SF作家第二世代が出揃うことになる。 
 

(2015.5)
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