この号の掲載作は4編。このうち、連載の白魔傳をのぞくと、読み切りの短編が2編。中編が1編。
まず、「ロン先生の虫眼鏡」表題でわかるように魚の話である。サメ、ジンベイ、マンボウ、ウナギといった極めて個性的な魚の話題。
「ボール」宇宙からボールがやって来た。どうもなんらかの意志を有しているらしい。道路をゴロゴロと猛スピードで走る。車を破壊して走る。モータリゼーションは崩壊する。
「マグワンプ4」電話したら混線していて、よく判らないところにつながった。で、ハゲの小男に捕まった。異次元の未来に送られることになった。
「白魔呪縄文」平賀源内捕縛される。牢に入れられた。
「人気カウンター」の欄にお知らせが。現在集計中の9月号分で打ち切り。SFの多様化にともない現状にそぐわなくなったとの理由。確かにさまざまなSFを多人数でランクをつけることによって評価するのはいかがなものかと思う。だったら個人でランクをつけるのはいいだろうと思って、「雫石鉄也ひとり人気カウンター」ということで小生1人でこの企画を拙ブログで今も続けている。
さて、この号の最大の目玉は山田正紀のデビュー作「神狩り」の一挙掲載。全ページ数232ページのうち96ページを費やしている。この号の約三分の一を使って、新人の300枚の作品を掲載しているわけ。いかに編集部が山田正紀という新人作家に太鼓判を押して世に出したかがよく判る。
「神狩り」については、よく知られた作品であるので、ここでのレビューは割愛するが、ともかく新人らしからぬ出来で、すでに完成された作家の書きっぷりの作品である。
この山田正紀を見出した「宇宙塵」の柴野拓美さん、世に送り出したSFマガジン編集部の慧眼は見事なもので、山田正紀はその後、SFはいうにおよばず、ミステリー、冒険小説、ホラー、時代劇、エンタティメント小説のあらゆる分野で健筆を振るい続けているのはご存知の通り。
先にデビューしている、田中光二、堀晃、後にデビューするかんべむさし、そしてこの山田正紀と、日本SF作家第二世代が出揃うことになる。
(2015.5)