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とつぜんコラム No.2

雫石 鉄也


 夏である。梅雨が開けるのを待っていたかのように、セミが鳴きだした。朝早くからシャーシャーとうるさいほど。このセミの声、日本の四季を実感させる大自然の演出としては名演出のひとつだが、小生は以前からある変化に気がついていた。
 小生の住む神戸では、昔はセミの声といえばジージーというアブラゼミがメインで、時々ミンミンゼミとニイニイゼミが混ざるというのがセミのコーラスの編成だった。シャーシャーと鳴くクマゼミはめったに見かけなかった。
 子供のころセミとりをしててシャーシャーという鳴き声を聞くとうれしかったものだ。他のセミよりひとまわり大きなクマゼミは、トンボでいえばオニヤンマ、甲虫類でいえばカブトムシの地位にあるもので、セミの横綱である。大きなクマゼミを捕ると友達から羨望の目で見られたりした。
 ところが最近は小生の家の周りで鳴いているセミはクマゼミがほとんど。アブラゼミはめったにいない。冒頭に書いたようにセミの声といえば昔はジージーだったが、今はシャーシャーである。
 クマゼミは元来南の方のセミで近畿地方では少数派だった。これは地球温暖化の影響である。気温の上昇にともなってクマゼミの棲息地がだんだん北上してきたわけだ。こうなるとクマゼミは昔ほどありがたくない。人間て勝手なもんだ。
 ところで地球温暖化というからには全地球的な異変である。このような惑星規模の異変は人間の一生という短い時問では、人間の目に見える変化などはないと思ってきた。ところが小生の半生の間にセミの分布の変化という誰が見てもわかる形で表れている。想像以上のスピードで異変は進行している。気がついた時はこの星は全然違う星に変わっているのかもしれない。なんのことはない我々人類はこの地球をテラフォーミングしているのだ。この地球のどこが気にいらんというてテラフォーミングしているのだろう。

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