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とつぜんコラム No.3

雫石 鉄也


「千と千尋の神隠し」と「ジュラシックパークIII」を見た。結論からいえば両方とも楽しめた。合格。客の入りも小生が行った映画館で、小生が観察した範囲内でいえばよく入っている。当たったといってもいいのではないかと思う。
「千と千尋の神隠し」は、あれだけ大当たりした「もののけ姫」から四年ぶりの宮崎駿監督作品だから、ある程度のヒットは約束されている。
「ジュラシックパークV」の方は「ロストワールド」がもひとつのできだったからどうかなと愚ったが、案の定隣の劇場の「猿の惑星」の方が入りが良かった。
 で、かんじんの映画のできだが、まず「千と千尋の神隠し」
 さすが宮崎駿。しかしスタジオジブリの最高傑作かと聞かれればうんとはいいかねる。傑作ぞろいのジブリの作品の中では比較的不出来の方にはいるのではないかと小生は思う。とはいえジブリの作品と比べるからであって、他のアニメ映画と比べると良質の作品であることはまちがいない。
 絵はあいかわらずきれい。抜群。画面のイマジネーションはすごい。日本的なような中国的なような不思議なセンスで、舞台となる街の様子も温泉町に神戸か横浜の中華街をかけあわせたような独特の街の雰囲気。出てくる神々もユニークでおもしろい。主人公の少女千尋も良いキャラクターだ。この映画、ようはこの女の子が異様な状況におかれて人間的に成長していく話だ。
 脚本が未整理な感じがした。出てくるキャラクターで、ああなるほどこいつはアレだったのかというのもいるが、結局あいつはなんだったんだというのもいる。映画を見おわった後、すべての謎が解決されて、なあ一るほどね、というカタルシスはなかった。映像が良かっただけに残念。
「ジュラシックパークV」
 おもしろかった。エンタティメントとしての映画を堪能した。娯楽映画は単純なほどおもしろい。この映画も恐竜がうじゃうじゃいる島に少年がとり残され、両親と彼らに依頼された恐竜学者たちが少年を救出して島を脱出するという極めてシンプルな話だ。途中に色々な恐竜が出てきてご機嫌をうかがう。今回の登場恐竜は、毎度おなじみヴェロキラプトル、ティラノザウルス、新登場としてスピノザウルス、プテラノドンなどのスターたちが入れ代わりたち代わり出てきて楽しい。食われ役の人物もちやんといる。
 ようはこの映画、一行が島中を巡っているうちに様々な恐竜に出会い、なんとか逃げおおせる(中には食われる人もいるが)道中を見せる映画である。
 どの恐竜とどんな具合に巡り合わせるか、どうしてその恐竜から逃れたかで観客をハラハラさせるのが監督の腕の見せ所だが、今回のジョー・ジョンストンもよくやっているが、切れ味という点では一作のスピルバーグがほんのちょっとだけうわまわっていたかな。

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