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とつぜんコラム No.5

雫石 鉄也


 狂牛病の影響で、わが家の食卓に牛肉があがらなくなってだいぶんたったような気がする。週末料理人である小生としてはメニューが限定されて困っている。牛肉そのものよりも、加工食品に使えないものが多くて、こちらの方がより困る。
 カレールー、インスタントラーメン、コンソメスープの素、ゼラチン、フォンドボー、デミグラスソース、ソーセージ、などにビーフエキスが入っている。これらが必要な時は品ぞろえの豊富な店で成分表を確認しながら買っている。なんとも不自由なことだ。
 数年前のO157騒動を思い出すが、今回は牛肉というメインの食材なだけに、問題は深刻なような気がする。前回はカイワレという脇役だったが、今回は主役である。影響は大きい。
 で、ちょっと考えてほしい。狂牛病が人に感染したとされる新ヤコブ病の患者数が日本ではゼロ、狂牛病が一番ひどい国のイギリスで100人ぐらいとされている。本当は何人か知らないけど。人口から考えると患者発生率は非常に少ない確率だ。交通事故で死ぬ確率やタバコで肺癌死する確率のほうがはるかに高い。それでもスーパーの牛肉の売り上げが落ち、鶴橋の焼き肉屋はガラガラで焼き鳥屋に商売替えしよかと言ってるそうだ。それで牛肉をさけている人たちが、タバコをスパスパ吸って車の運転をしている。なんとも矛盾した話しではないか。
 いわゆる風評被害というやつである。狂牛病の直接の被害より風評被害によって業界がこうむった被害のほうが大きいのではないだろうか。なぜ風評被害がこんなに大きくなったか。みんな不安だから。あたりまえ。宝くじで3億円当たる確率と、今牛肉を食べて新ヤコブ病に羅る確率は、宝くじに当たる確率の方が高いだろう。しかし、年末ジャンポを買ってもまさか当たるとは思わないけれど、牛肉を食べてひょっとして新ヤコブ病になるかもしれないと考える人の方が多いわけだ。悪いほうが実現の可能性が高いと思ってしまう。人間とは心配性な動物である。この性格があったからこそ地球上の全ての人間を全滅させても、おつりがくる核兵器をもっているくせに人類はいまだに絶滅していない。
 この狂牛病は、狂牛病に権った牛の肉や骨で作った肉骨扮を牛に食べさせたために伝染していったとされる。牛は本来そんなものは絶対に食べない。自然の摂理に反することをしているわけである。こんな不自然なことをしてなにもないはずがない。この騒動は慢り高ぶった人類に発せられた大自然からの警告にちがいない。

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