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とつぜんコラム No.11

雫石 鉄也


 阪神タイガースが好調や。5月2日現在で17勝9敗1分。2位の巨人に1ゲーム差をつけて首位。関西に多数棲息する阪神ファンの皆様におかれましては全くご同慶のいたりである。
 藪、井川、ムーア、谷中たち先発投手陣のがんばりが開幕ダッシュの原動力となったのは衆目の一致するところ。しかし、先発が調子が良すぎて中継ぎ投手の出番がのうて、伊達、遠山たちがもひとつビシッとしないという貫択な悩みがあったりして。で、投手たちに疲れがでてきたら、今岡、アリアス、桧山たちがホームランをようけうちよって、結局、四月を首位で終わるという十七年ぶりの快挙をなしとげよった。ま、投手が打たれる、野手が打てへんというダメ虎の片鱗が、首位街道暮進中にも垣間見えるのはかわいいとこやけど。とにかく、どっか壊れたんとちゃうかと思えるほどの阪神の強さや。
 で、なにが変わったかとゆうと、だれが見てもわかる通り監督が変わった。監督が変わっただけでこんなに変わるもんやろか。
 野村前監督と星野監督の一番の違いはなんやろか。データ重視の野村野球と闘志むきだしの燃える星野野球と、監督個人のキャラクターによるところが大きいけど、結局野村のおっさんやったら選手のやる気がでなかったということやろか。藪と今岡の大変身がその証拠や。
 野村時代、カツノリと広沢は不動の一軍レギュラーやった。知ってのとおりカツノリは野村氏の実子、広沢はヤクル卜時代からの愛弟子。こないな公私混同的な個人的感情で選手起用をやったら、他の連中のやる気がでえへんのはあたりまえや。矢野なんかは野村のおっさんのムスコかわいさでワリくうてしもた犠牲者や。その矢野は監督かわって正捕手に定着。強力先発陣を支える女房役として、開幕ダッシュの最大の功労者となった。その証拠に矢野が怪我で休んだら、その先発投手たちの調子が開幕当初より落ちたやろ。
 考えてみたら同じようなことは日本中にある。同族、世襲、二世。実業界も政治の世界もウジャウジャわいてきよる。会社の次の社長は社長のムスコが、病院の次の院長は院長のムスコが、代議士が死によったらあと継いだムスコが立候補して当選しよる。日本中あちこちで後継ぎボンのバカ息子の被害者だらけや。
 後継ぎポンでも実力があればええやないかゆうけど、何の係累も持たないワシら一般庶民は後継候補レースに出場さえできひんやないか。えらいさんのムスコではないけど、この不景気日本をかえるできるヤツがどっかにおるかも知れへんで。
 で、巨人が一ゲーム差に迫ってきよる。結構なこっちや。巨人はやっぱり強ないとおもろない。巨人は常に阪神よりちょっと上をいってもろて、十月になってスコッと抜いて逆転優勝して東戎どもの くやしがる顔見て喜ぶ。これが阪神ファンの理想やな。


(2002.5)

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