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とつぜんコラム No.15

雫石 鉄也


 スーパーに買物に行くと「実習生」のネームプレー卜をつけた係員がいる。彼女は手慣れていない様子で、モタモタとパーコードの読取り作業をしている。当然このレジの列は他のレジよりも進むのが遅い。小生が並んでいる列だ。
 牛乳やら輸入酒特別価格フェアのジョニ赤やらを入れたカゴをぶら下げて小生は自分の判断ミスを後悔する。何木もあるレジの列のうち、どの列に並ぶかは経験と観察力が必要。まず、列の長さ。列を構成しているメンバーの人種。男が何人混ざっているか。ねえちゃん、おばちゃん、おぱあちゃんの比率。人々がカゴに入れてる商品の種類と量。レジ係の習熟度。これらを総合的に判断する必要がある。判断を誤れば長時間列に並ばなくてはいけない。並びながら考えた。レジ係の胸の「実習生」のネームプレートは誰にどういう意志を伝えようとしているのだろう。
 ただたんに、この係員は実習生です、という事実だけを伝えようとしているのか。はたまた、この係員は実習生ですので仕事に慣れていませんのでご理解とご協力を、と店が客にいいたいのだろうか。前者ならまったく無意昧。ネームプレートのぶんだけ商品を安くしてくれ。後者なら甘ったれた話だ。
 実習生に経験をつませて実戦しながら一人前にするつもりなら、われわれ客がなんで店のレジ係の練習台にならなくてはいけないのだ。いやならそのレジにならばなかったらいい、とういうのであれば列に並ぷ前に実習生のレジだとわかるようにすべき。
 本来なら充分に社内研修を施して「実習生」でない状熊にして客の前に立たせるべきだ。不慣れな係員はそれだけサービスが落ちるからその係員がいるレジでの買物はそれだけ安くするべきだろう。「実習生」を使っているから今の価格でやれるというのであれぱ、全員「実習生」にしてもっと安くしてもらいたい。とにかく「実習生」のレジにあたるかベテランのレジにあたるか運しだいという、中途半端ないまのやりかたは店が客に甘えているとしか思えない。
 はなしはコロッとかわるが、よく車のリアウィンドーに「赤ちゃんが乗っています]というステッカーが貼ってある。あれもよく意味がわからない。赤ちゃんが乗っているからぶつけるなということなのか。では、赤ちゃんが乗っていなかったならぶつけてもよいのか。赤ちゃんが乗っているので卜口卜口走るため渋滞の原因になりますよ、ゆるしてね、ということをいいたいのだろうか。とにかくどういう意志を他の車に伝えたいのかよくわからない。
 赤ちゃんが乗っているいないに関わらず安全運転に心がけるべきだし、交通の流れに乗らない/乗れないトロトロ運転は渋滞の原因となり大迷惑なものだ。赤ちゃんを乗せて走るつもりなら、自分の赤ちゃんが大切ならそれだけの運転技量を身につけるべきである。自信がないなら公共交通を利用するべきである。
 ともかく「実習生」の件も「赤ちゃんが乗っています」の件も根本は一緒。自分がこういう立場だから理解してね。「実習生」だからモタモタしても失敗してもゆるしてね。「赤ちゃんが乗っています」からぶつけないでね。守ってね。
 甘えないでほしい。一人前の店員になって客に接すべし。どんな状況でも安全運転ができる技量を身につけてから道路にでるべし。



(2002.9)

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