戻る

とつぜんコラム No.20

雫石 鉄也


2002年に小生が読んだ主な本は以下のとおり。ずいぶん少ないもっと本を読まなくてはと反省。あれ、この書き出し、去年の今頃のこのエッセイでも害いたな。進歩のないやつじやわい。
    「ルー・ガルー」京極夏彦、「ホームレス作家」松井計、「エンディミオン」ダン・シモンズ、「模倣犯」宮部みゆき、「星群ノベルズ席No.21」、「神は銃弾」ボストン・テラン、「かめくん」北野勇作、「新世紀未来科学」金子隆一、「祈りの海」グレッグ・イーガン、「聞先案内人」大沢在昌、「著者略歴」ジョン・コラピント、「世界SF全集小松左京」、「ひと月に百冊読み三百枚書く私の方法」福田和也、「世界SF全集ハインライン」、SFマガジン各号、SFジャパン各号
 ベスト3は「模倣犯」「エンディミオン」「新世紀未来科学」
 「模倣犯」2002年に読んだ本でぷっちぎりのベスト1がこれ。
 上下2巻の超大作を一気に読んだ/読まされた。久しぶりに寝食を忘れて読害にふけったという経験をした。宮部みゆきの術に完全にかかってしまったわけ。おそるべし宮部みゆき。
 登場人物一人一人がじっくりとていねいに書かれている。特に犯人のキャラクターの造形が見事。小生は前半を読んだだけではこの人物は象徴的な存在で、実在しないキャラクターかなと思った。それが後半にだんだんと実在感を持ってくる。宮部みゆきが売れっ子であるのは納得できる。
 「エンディミオン」もちろんSFである。SFとしてよんでも充分以上に面白い。しかし上質のSFを読んで感じるセンス・オブ・ワンダーは「ハイペリオン」二部作の方により強く感じた。小生はこの作品を冒険小説として楽しんだ。追うもの。迫われるもの。次々襲いかかる試練。その試練をかいくぐる知恵と勇気。う一ん、冒険小説している。「このミス」で内藤陳さんがこの作晶をリストアップしていなかったのが不思議。シモンズはSF作家というより冒険小説作家といったほうがいいのでは。
 「新世紀未来科学」勉強になりました。まる。最新の先端科学をコンパクトに52の項目にまとめてある。1項目5ページ。すぐ読める。次は次はとピーナッツを食べるように読み進むことができる。先端科学に通じていてなおかつSFを理解していないとこんな本は害けない。さすが昔からビッグネームファンであった金子隆一。SFに対する愛情がいっぱいの一冊。
 「SFマガジン」は正直いうと少々調子を落としている。「特集」という形式をそろそろ考えなおしたほうが良いと思うが。3月号「希望ホヤ」石黒達昌、11月号「蜘珠の王」飛浩隆、12月号「秋のファンタジイ特槃」が面白かった。
 「世界SF全集」の小松左京とハインラインを読む。日本と海外のオールタイムベスト1の「夏への扉」「果てしなき流れの果てに」を読み直した。うん、確かに面白い最高のSFだ。今読んでも古びていない。しかし、考えてもらいたい。「夏への屏」は1957年「果てしなき流れの果てに」は1966年の作品なわけ。それからずうっと45年と36年にわたってベスト1なわけですよ。陸上競技や水泳でこんなに長い年月世界記録や日本記録が破られなかったらそれらの競技は競技として盛んといえますか。世のSF作家のみなさんもっとがんぱって。



(2003.2)

inserted by FC2 system