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とつぜんコラム No.24

雫石 鉄也


 不可解なことが多い世の中で、最近一番不可解な事は例の「タマちゃん」騒動である。何の事はない、一匹のアゴヒゲアザラシが都会の川に紛れ込んだだけのこと。確かに普通は北の海にいるアザラシが都会の真ん中の川にいることはめずらしぃ。しかし、それだけのことである。これが例えばイクシオザウルスがあのへんの川をうろうろしていれば大騒ぎするのも納得がいく。それがなぜアザラシー匹であんなに大騒ぎするのか小生にはさっばりわからない。
 くだんのアザラシが可愛い顔をしているからか。アザラシの顔なんかどれも同じに見える。そんなにアザラシの顔を見たいのならぱ水族館にいけばいくらでも見れる。別に神奈川だか埼玉だかの川にいる個体が特別可愛い顔をしているわけでもあるまい。
 アザラシだから可愛いのか。ネズミやイタチだったら可愛くないのか。ネズミやイタチの顔をしげしげ見たことのある人は賛成してくれると思うが、彼らも結構可愛い顔をしている。でも地下鉄の線路の脇でドブネズミを目撃しても誰も騒がない。やっぱり普通はいないめずらしい動物が身近な所にいるからなのかな。
 芦屋川にアロワナがいたということを聞いたことがある。アロワナは大陸移動説の生き証人といわれる古代魚て芦屋川なんかにいるはずがない。神戸市立須磨水族園のサタデースクールというイベントに子供と一緒に参加した。その時構師の学芸員に聞いた話では須磨の海でツバメウオがいたとのこと。この魚が瀬戸内海のこんな奥まで迷いこむのは極めてめずらしいらしい。芦屋川のアロワナ、瀬戸内海のツバメウオ、埼玉のアゴヒゲアザラシではどれがめずらしいか甲乙つけがたい。なぜアザラシだけがアイドルになったのか。不愚議だ。
 やっぱりテレビなどのマスコミが騒ぐから方向音痴のアザラシが「タマちゃん」になったのだ。試しにどこかのテレビが銀座のドブネズミを「ドブちゃん」といって追いかけてみたらいい。ひょっとするとドブネズミのアイドルが誕生したりして。



(2003.6)

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