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とつぜんコラム No.28

雫石 鉄也



 阪神が優勝してしまいました。阪神ファンの皆様におかれましてはまことにおめでとうございます。小生も1ファンとしてこんなに喜ばしいことはございません。18年ぶりの優勝でございます。十年一昔といいますから、二昔近い年月が流れました。この時の流れのあいだ小生は何をしていたのだろうと省みますに、ただただ馬齢を重ねてきたのみで、わが身の進歩のなさに自責の念にかられるのみでございます。
 18年前は小生も若うございました。多少は将来に希望などもありましたが、今はただの中高年リストラおやじでございます。18年前はバブル景気まっさかりで日本中がお祭り騒ぎしておりました。豊田商事事件や日航ジャンボ機の墜落、などがありまして一種異様な熱気と雰囲気に日本中が特に関西が包まれておりました。小生はといえば、1984年に北海道でいいだしっぺの一人となった日本SF大会の実行委員会のメンバーとなっておりました。これに関連して神戸で日本SFフェスティバルを開催。毎週会合を大阪の梅田で開き二次会で毎週飲んで騒いでおりました。振り返れば小生の今までの人生で最もSFファン括動に熱をいれておる時代でした。青春しておりました。あれから18年。小生も結婚し子供ができてリストラもされて、上記のような身の上に相成りました。まことにもって祇園精舎の鐘の音夏草やつわものどもが夢の跡でございます。
 この一文を書いている今は(10月4日)は日本シリーズの結果はわかりませんが18年前は西武を破って日本一になりました。今年の阪神は確かに痛快でございました。特に前半。圧倒的な強さで他の5球団を問題にしませんでした。2点や3点リードされていても必ず逆転してくれますから安心して見ておれました。まことにうれしゅうございます。しかしここで少し賛沢をいわせてください。小生の心の中に素直に100%喜べない部分があるのです。理屈ではわかっているのですよ。ファンとして素直にに喜ばなければいけないと。しかしどこかカタルシスを感じないのです。なぜかと考えたらその原因がわかりました。巨人でございます。巨人が弱いのが気に食わないのでございます。あのようなよわっちい巨人は巨人ではございません。巨人は強くないと巨人ではございません。巨人は阪神より常に上位にあって九月後半か十月になってシーズンも終わりになりかけたころ阪神がスッと迫い抜いて逆転優勝。くやしがる徳川さんのお膝元の東京人たちにべろべろばあをする。これが最高でございます。これでこそ大阪夏の陣冬の陣の恨みを晴らせるというものでございます。そのためには堀内新監督にはぜひともがんばってほしゅうございます。


(2003.10)

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