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とつぜんコラム No.29

雫石 鉄也




 前の会社でリストラにあって退職して1年。昨年の11月に退職。12月から就職支援会社の世話になり1月から本格的に求職活動を始めた。今の勤務先に再就職したのは今年の6月。ちょうど半年間の求職活動をしたわけ。その間44社に履歴書を送った。面接までこぎつけたのは9社。このうち行けるんじゃないのと手応えを感じたのは今の勤務先も入れて2社。就職支援会社の担当者の話ではこれでも良いほうだそうだ。今の勤務先は年間契約の契約社員。12月に契約更改があり、来年も雇ってもらえるかどうかわからない。不安定なもんです。
 これが50歳を過ぎた中高年の就職状況だ。敗戦直後の復興期から高度経済成長の時代、バブル経済までの時代と現在とは完全に時代は入れ替わってしまった。労働者働く者が企業を選んだが、現在は企業が働く者を選ぶ。時代の流れだからいかんともしがたいが、写真のポジとネガのように完全に逆転してしまった。とはいうのもも今はもちろんそうだが、昔も原則的に企業の方が労働者より強い。あっちは金を出す方こっちは金をもらう方。こっちは労働力を売っている向こうは労働力を買って下さるお客様。企業の方が強いのは当然。双方の利害が対立すると、つきつめると企業は「文句あるんやったらやめたら」という論点に行く。これに対して働く方は選択肢は二つしかない。がまんして残るかがまんせず辞めるか。昔は労働組合も多少力もあったので、がまんせず残るという選択肢もあったが、組合に話を持って行って問題にするアクティブな人は少数で現実問題としてほとんどの人が、この選択をせまられる。現在の不況下の中高年労働者にとっては、選択は本当にこの二つしかない。 
 この国で生きて行く方法を考え直した方がいいのかも知れない。この国で生きて行く方法、要するに生存に必要な経済力を入手する方法である。
 農業、漁業などの第1次産業に従事するか事業主になるか、または芸術的な才能があったり、特殊な技や芸を持っているいる人はいいが、それ以外の主に都市で生活している人はどこかの企業に雇用してもらう以外に生計を立てる手段はない。だから現実問題としてこの国のかなり大きな部分の殺生与奪を企業が握っている。すこし昔に「社畜」という言葉があったが、2003年の現在新しい「社畜」が生まれている。昔の「社畜」は好きで会社に忠誠をつくし「エコノミックアニマル」と化して働いていたが、今の「社畜」はほかに行く所がないから、その企業しか選択肢がないから、その企業の経営者に頭から小便をかけられても、へいへいといってその企業に在籍しなくてはならない。
 ここらで企業に雇われるという生き方以外の道はないか考えようではないか。いつまでも企業経営者どものいいなりでいいのか。全国の中高年のリストラおとうさんたちよ、これからの新しい生き方を考えよう。


(2003.11)

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