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とつぜんコラム No.30

雫石 鉄也




 2003年が終わった。歳を取ると時の流れが早く感じる。今年もあっというまに通り過ぎてしまった。しかもこの時間の流れの加速感が年々早くなるような感じだ。筒井康隆の短編で「急流」という作品があったが、まったくあの小説の通りだと実感する。
 今年も色々あった。イラクで戦争があった。阪神タイガースが優勝した。今考えて出てくるのはこの二件ぐらい。他に何があったかな。図書館にでも行って新聞の縮刷版でも見て執筆しなくてはいけないのだろうが、このコラムは別に「天声人語」のような新聞のコラムではないのでそこまでせんでもええやろ、というわけで、あとは極めて極私的なことを書き連ねていくことにする。
 小生にとって一番大きな変化は、なんといっても再就職したことだろう。2002年の11月にリストラで失業して今年の六月に今の勤務先に再就職した。年収が半分になり一年毎の契約社員という極めて不安定な身分だが、ともかく職をみつけた。25年ぶりに広告のコピーを毎日書いている。まさかこの歳になってコピーライターに復帰するとは思わなかった。年収が半減したことと関連するが、車を手放した。10年乗った愛車ホンダ・インテグラをガリバーで15000円を出して引き取って貰った。十歳の時に父がトヨタのパブリカを買って以来44年ぶりに車の無い生活をしている。実に不便な思いをしている。
 愛車との別れをしたが、やはり10年使った愛機とも今年別れた。NECの文豪を愛用していたが、一年ほど前から調子が悪かったが、とうとう壊れてしまった。で、中古のソニーのバイオとIBMのシンクパッドを買った。バイオは自宅、シンクパッドは会社で使っている。両機ともワードを入れているが、ワープロとしては文豪の方が圧倒的に使い易い。一太郎を自宅で使いたいが最新バージョンの一太郎じゃ中古のバイオではうまく動かない。文豪が懐かしや。
 金魚が子供を産んだ。震災以前は熱帯魚の水槽が二つあった。震度7の激震でエサの糸ミミズがぶちまけられて部屋中ミミズだらけ。水槽の砂利と水と水草と魚の死体で大惨事。電気が復旧した時水温調整用のヒーターで火事がいきかけた。で、我が家は魚の飼育は禁止になったが、震災の年の夏子供が近所の神社の縁日で金魚すくいをしてきた、生き物だからその辺にほかすわけにもいかず、しかたないから彼らだけは飼うことにした。あれから8年。その時の金魚が子供を産んだ。鑑賞魚店で和金の稚魚はだいたい30円。金魚でも8年飼えば30円稼いでくれる。
 SFマガジンが半年間無料送付してもらえた。読者カードでアンケートに答えたら抽選で当たって半年間プレゼント。ちょうど失業中の半年間SFマガジンが無料で購読できた。大変にありがたかった。助かった。40年以上SFファンをやっているとSFの神様が助けてくれるのだ。
 

(2003.12)

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