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とつぜんコラム No.32

雫石 鉄也





「半落ち」横山秀夫、「ロケットボーイズ2」ホーマー・ヒッカム・ジュニア、「傀儡后」牧野修、「東京アンダーワールド」ロバート・ホワイティング、「銀河パトロール隊」E・E・スミス、「魔風海峡」荒山徹、「飛蝗の農場」ジェレミー・ドロンフィールド、「世界SF全集日本のSF(短編集)現代編」、「グリーン・マーズ」キム・スタンリー・ロビンソン、「ナース」山田正紀、「イエスのビデオ」アンドレアス・エシュバッハ、「太陽の簒奪者」野尻抱介、「ホーキング、未来を語る」スティーブン・ホーキング、「航路」コニー・ウィルス、「ハルビン・カフェ」打海文三、「憤怒」G・M・フォード、「アラビアの夜の種族」古川日出男。SFマガジン各号

 以上が2003年に小生が読んだ主な本。もっと読んだが他は駄本なので特に記さない。こうして振り返ると少ない。反省。 ベスト5は「半落ち」「銀河パトロール隊」「魔風海峡」「ナース」「アラビアの夜の種族」と、いうところか。

「半落ち」
「空白の2日間」というナゾひとつで最後まで読ませる。泣かせ話。直木賞の選考で「ミステリーとしての整合性に疑問」という意見が某選考委員から出て、ミステリー界全体にまで批判が及んだ。小生はミステリーとして傑作と思う。ミステリー界の隣のSF界に長らく住んでいる者として少々カチンときた。
「銀河パトロール隊」
 レンズマンは小生のSF者としての入門書。今読んでもワクワクする。なつかしや。あのハードSFの小隅黎にレンズマンを訳させるという企画を実現させた担当編集者の小浜徹也に拍手。ただ、今読み返してみるとアメリカの臭いが少々鼻につく。
「魔風海峡」
 抜群におもしろかった。動く大仏。おしよせる死人兵。石田三成の命を受けた真田幸村と猿飛佐助ら十勇士。対するは服部半蔵と高麗忍軍。スペクタクルたっぷり。「ハムナプトラ」のソマーズ監督に映画化してもらいたい。
「ナース」
 小品だが読ませる。航空機墜落現場にゾンビがうようよ。立ち向かうは7人の看護婦。7人の登場人物のキャラがいい。特に主役の水島理恵がかっこいい。映像化すれば江角マキコが適役かな。
「アラビアの夜の種族」
 物語性たっぷり。マトリョーシカのような入れ子構造をした小説。本を読んで別世界へ連れて行かれるという、小説を読む楽しさの原点を味わせてくれた。3人の主人公では小生はアーダムがお好みだがこれは人様々だろう。
 以上2003年のベスト5。その他「航路」がよかった。上下2巻の大作ながらすぐ読める。下巻を読んでいてびっくり。あんなんありか。SFマガジン10月号「非英語圏SF」なかなかの好企画。自分の知らない世界を垣間見せてくれるという雑誌ならではの企画。単行本だと自分の興味のあるものしか読まないが、定期購読している雑誌なら自然と色々な勉強ができる。   
 

(2004.2)

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