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とつぜんコラム No.45

雫石 鉄也




 もうすぐプロ野球開幕。今年のプロ野球は例年になく注目が集まることだろう。昨年あれだけ大騒ぎしたのだから、どれだけ心を入れ替えてファンを楽しませてくれるのか、大きな関心を持って見守りたい。
 それはそうとして、今年も何人かの選手がアメリカのメジャーリーグへ行った。スター選手が続々と日本のプロ野球界から流出している。日本の球界は完全にメジャーの二軍下請けと化した。一人ぐらいオレは日本のプロ野球が好きやねん、メリケンなんぞには行かんぞ。オレががんばって日本のプロ野球を盛り上げて、メジャーを日本の下請けにしたんねん。オレがいるかぎり日本がメジャーや。と、いうぐらい気骨のある選手が一人ぐらいいてもいいと思うが。で、このメジャー行きを強く希望して話題を呼んだ選手が二人いる。阪神の井川と巨人の上原である。日本を代表する東西の人気球団の両エース。この件に関して大方の意見は二人ともわがまま。ルールは守らにゃいかん。と、いうものであった。
 小生はこの二人の肩を持ちたい。阪神ファンの小生にとっても井川が抜けたら阪神の優勝は難しいので大変悲しい。でも本人がアメリカに行きたい、というのだからしかたがない。ルールを守れと声高に怒っていた年寄りの野球評論家がいたが、「アメリカに行きたい」と希望を表明するだけが、なぜルール違反なんだろう。強引に渡米してしまうのならともかく、二人ともポスティングシステムによるメジャー移籍を希望しただけではないか。これのどこがルール違反だ。
 ドラフト制度も含めて選手が自分で自由に所属球団を選べない今の制度は基本的に間違っていると思う。日本国憲法にはこう書いてある。第18条「何人もいかなる奴隷的拘束も受けない。その意に反する苦役に服せられない」第22条「移転および職業の自由を有する」FAを取得するまで意中のチームに移転できないのは18条に、プロ入りの時、自分自身の意思で所属先を選べないのは22条に違反しているのではないか。
 プロ野球選手になる/ならないを選べる自由はある。12球団で一つの会社みたいなもの。所属先を営業にするか総務にするか決めるみたいなもの、との反論も有るでしょう。それならどの球団も待遇は全部同じにすべきである。A球団とB球団で待遇が全く違う現状ではこの反論はあたらない。自動車の設計を志望している若者はトヨタに行くのも日産に行くのも自由でしょう。球団を自由に移転できることを認めたら、せっかく1人前に育てたのに。そんなこと実業の世界では。当たり前。技術者は自由に会社を替われる。プロ野球は他の業界とは違う。そんなこと認めたら戦力の不均衡になってリーグ戦が面白くなくなる。そうでしょう。確かに選手がいつでも自由に所属球団を選べるようになれば一部の球団ばかりに有力選手が集まり、野球が面白くなくなるでしょう。そんなことこんな素人の小生でもわかっています。もっと事のわかったプロ野球のエライ人たちもわかっているはず。自分の球団だけ良ければ良いという考えはいずれ自分自身の首を絞めることがわかっているはず。それがわかってないなら、そんなアホなおっさんらがやっているプロ野球のファンとなったことを身の不幸とあきらめよう。
 
 

(2005.3)

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