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とつぜんコラム No.49

雫石 鉄也




 阪神タイガースが好調や。勝率5割9分5厘、2位とのゲーム差5.5、貯金14。(7月4日現在)数字的に見ると優勝した一昨年の同時期の勝率7割2分、ゲーム差18.5、貯金40(2003年7月28日現在)に比べると確かに小さいが、これは一昨年が異常で今年が普通なんや。一昨年は星野監督という強烈なカリスマ性を持つ監督の下、なにか憑き物がついたような神がかり的な強さやった。ことしはちゃう。目をしょぼしょぼさせる岡田監督の下、普通に戦って普通に競り合って普通に勝ちよる。打線も一昨年のように野手全員がごんごん打って太い線となり、守備固めで出た久慈のような選手までタイムリーを打ちよった。今年はだれかが調子が悪いとだれかがフォローする。これを書いている今は今岡が長いスランプで苦しんでいるが、シーツ、金本、鳥谷らがええ仕事しとるから今岡の不調が目立たん。投手かてそうや。守護神久保田かて、往年の横浜の佐々木や、阪神でいえば中村監督時代の田村勤のような絶対的な守護神やのうて、けっこう打たれよる。時々救援に失敗しよる。それでもなんとか押さえよる。一昨年のような異常な強さは何年も続かへんけど、今年のように普通に強いのは地に足が着いた強さやさかいほんまに強い。
 実力、観客動員数、TV視聴率、オールスターの人気投票、どれをとっても今年の阪神は巨人を圧倒しとる。これは日本のプロ野球の巨人時代の終わりを意味しとる。巨人の絶対的な人気に頼って商売してたプロ野球の構造が変わってきたというわけや。北海道日本ハム、福岡ソフトバンク、東北楽天などのように地域密着型の球団が増え、その土地その土地の巨人ファンを切り崩していったのや。巨人が密着した地域なんぞは最初からなかったのや。しいていえば日本全土が巨人の密着した地域やったんや。それが地域密着型の球団という本来あるべき姿に日本のプロ野球が変化してきたから、それと反比例するように巨人の人気が下がってきたんや。で、昔から関西という首都圏に次ぐ地域を地盤としてきた阪神が巨人に代わって人気を得てきたわけ。巨人時代が終わり阪神時代が始まる。いや、プロ野球そのものの時代の終わりの始まりかも知れんぞ。
 ミスタープロ野球ともいうべき長嶋茂雄氏が7月3日の巨人VS広島の試合を東京ドームに観に行ったゆうんで大騒ぎ。これは誰が見たって巨人の人気取り。巨人は病み上がりのマヒが残る長嶋氏の人気に頼らなければダメなほど人気が凋落しとるわけ。で、勝てばええけど最下位広島に負けてやんの。
 ミスター長嶋茂雄氏は巨人の臨終を見届けにいったのや。小生は長年の阪神ファンとして巨人の臨終は大変悲しい。阪神はこれから誰を相手に伝統の一戦をやったらええのやろ。この上は死にかけたカリスマ長嶋氏と、もうすぐ死ぬであろうナベツネ氏が強力タッグを組んでドラフトもFAも関係あるか、日本のプロ野球なんぞ知ったことか巨人さえ良かったらええんや、と、今まで以上に金にモノをいわせて各球団の主力選手をかき集めて徹底的な悪役[ヒール]球団としてよみがえる事を願う。巨人の生き残る道はそれしかあらへんのとちゃうか。
 
 

(2005.7)

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