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とつぜんコラム No.50

雫石 鉄也




「スターウォーズ エピソード3 シスの復讐」を観た。大変良かった。面白かった。シリーズ最高の作品は?と聞かれて第1作「エピソード4」か、こちらか迷うところだ。ただこれだけはいえる。このシリーズのファンで5作全部観てきた人は、なんとしても、この「エピソード3」は観るべし。万が一観逃せば28年間のSWファンとしての年月が無駄になる。それほど「エピソード3」はこのシリーズにとって重要な作品といえる。まだ観てない人がいるといけないので詳しくはいえないが、この作品によってシリーズ6作がきれいな輪となった。ジグソーパズルの最後のワンピースがパチッとはまり、壮大な「スターウォーズ・サーガ」は完結した。
 2002年8月のこのコラムでこんなことをいったが、結論としてこの28年間大いに楽しませてもらった。ルーカスにはここで再びお礼をいっておく。面白い映画を28年間ありがとう。
 で、「エピソード3」だが、不満を2点あげておこう。
まず一番重要な点だが、なぜアナキンがジェダイを裏切ってフォースのダークサイドに堕ちたのか。理由として×××が××して××する夢を見たから。そして×××を××するためにどうしても、ジェダイではなくシスの力が必要だった。そのため苦悩の末ダークサイドに堕ちたという。×××が××するというのは、ただアナキンが夢を見たというだけ。何の根拠もない。なんとも非科学的なことである。こんなことで全銀河に多大な影響を及ぼされてはたまらん。
 この映画、まず戦闘シーンから始まる。このへんの映像は、28年間の技術の進歩で大変見ごたえがある。しかし長すぎ。いつまで続くんやろ、と思うほど延々と戦闘シーンが続く。チャンバラはオビ・ワンVSアナキン、ヨーダVS皇帝、メイズ・ウィンドウVSパルパンティーン、と3組のチャンバラがあったが、いずれも長すぎ。こういうアクションシーンはこのての映画の一番の見せ場で、たっぷり見たいが、モノには頃合というものがある。ちょっと食い足らないかなと思うぐらいでちょうどいい。第1作の「エピソード4」はそのへんの兼ね合いが実にうまかった。ルーカスの演出力が落ちたのだろう。
 ルーカスはこれで映画版スターウォーズは打ち止めといっている。
当初このシリーズは全9話で構想されていた。そして前半の6話が映画化された。これで良かったのではないだろうか。アナキン/ダース・ベイダーの物語としてきれいに納まった。当初の計画通り、このあと「エピソード7、8、9」を創ったとしても蛇足にしかならない。
 そして、ルーク、レイア、ダースベイダーが生まれた。帝国VS共和国、シスVSジェダイ、ルークVSアナキンの28年におよぶ壮大な戦いは終わった。SF者としてこの「スターウォーズ・サーガ」を総括すると、活字を介してイメージの世界でしか見ることのできなかった映像、風景を「これでどうだ」とルーカスが目の前に映し出してくれた。もちろん小生が生まれてから読んできた数多のSFを完璧に映像化したかといえば、もちろんそうではない。でもある種のSF〈スペースオペラ〉を読んで面白いと感じたセンスオブワンダーを目で見せてくれた。ジョージ・ルーカスに拍手。
 
 

(2005.8)

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