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とつぜんコラム No.51

雫石 鉄也




 小生も結構色々な趣味を楽しんできた。その中の一つが熱帯魚の飼育。もともと魚が好きで大学の学部もその関連の学部に進学したほど。高校生のころから熱帯魚の飼育を始めた。初めはネオンテトラ、エンゼルフィッシュなどのごく一般的な魚から入門した。ところが小生の熱帯魚飼育趣味前期はある魚一尾と長い付き合いをすることになる。
 ある日行きつけの観賞魚店で大変かわいい魚を見つけた。大きさは十円玉ぐらい。あまり見かけたことのない魚だが、そう高価ではなく当時の小生のこずかいでも十分買える価格だった。その魚を衝動買いしてしまった。本当は、こんな衝動買いは生き物の飼育を趣味としているものにとっては、一番してはいけないことなのだ。その魚のことをよく調べて、最後まで自分で飼えるかどうかよく考えて買うか買わないか決断すべきである。
 くだんの魚はどんどん大きくなった。その魚は南米産のアストノータス・オセレイタスというシクリッド科の魚。あっという間に他の魚を食べつくし水槽内で1尾だけになってしまった。最初は熱帯魚用の餌を与えていたが、試しにソーセージをやると喜んで食べた。生餌を与えればいいのは分かっていた。大型の肉食性の魚は入手しやすい金魚でも与えるのだが、小生のこずかいがもたないし金魚がかわいそうで1度やっただけだった。ソーセージ以外にも竹輪、蒲鉾、魚の切り身のかけら、なんでもよく食べた。この魚本来は30センチほどの大きさになるが、その時の水槽は60センチの小さいサイズだったので20センチ以上大きくならなかった。よく食うからよく糞をして、小さい水槽に大きな魚がいるものだから、水がすぐ汚れてしょっちゅう水槽の掃除と水替えをしていた。正直、飼育に手のかかる魚だった。でもその見返りはあった。魚のくせに大変に人によくなつき、水槽に近づいただけで水面に口を出して餌を要求する。この魚の芸は人になつく以外に、もうひとつ。長生きということ。10年近く小生の友達でいてくれた。
 アストロが死んで熱帯魚の飼育はやめていた。結婚し子供もできた。子供は小生のDNAを受け継いだのか水の生き物が好きな子供だ。で、小生も嫌いではないので60センチの水槽を二つ設置した。片方はテトラ、ダニオ類を中心とした小型でキビキビ泳ぐキビキビ水槽、もう片方はエンジェル・フィッシュ、グーラミィ類などゆったりとした魚のユーガー水槽。しかしあの阪神大震災が発生。二つの水槽は倒壊。砂と水と水草と魚の死体で部屋の中は大惨事になってしまった。そのうえ電気が復旧した時ヒーターが過熱してもう少しで火事を発生しかけた。
 その後熱帯魚の飼育はしていない。リストラされ経済的にとてもそんな余裕はなくなった。熱帯魚の飼育は、魚、水草の購入費、器具代、餌代に電気代と結構お金がかかる。いずれがんばってお金を稼いで再開してやろうと思っている。そしてなんかの拍子で大富豪にでもなったら私設水族館をぜひ造りたい。その時はアロワナを絶対飼うぞ。もちろん、あのなつかしいアストロノータス・オセレイタスもメンバーに欠かせない。


(2005.9)

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