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とつぜんコラム No.55

雫石 鉄也





 昨年の12月に持病の胃潰瘍を発病して入院していた。あたりまえのことだが、ベッドで安静にしてなくてはならない入院生活とは退屈なもの。本を読むかテレビを見るぐらいしかすることがない。本は長時間集中して読むと疲れるので、テレビをよく見た。ちょうど耐震強度偽装問題の国会での証人喚問がテレビ中継されていた。一日中見ていた。ま、面白かったといえよう。しかしこういうものはコワいもので、だれがアホかだれがカシコかようくわかる。質問に立った議員各氏はここが目立ち所と皆さんがんばっておられたが、中には逆効果の方もおられた。自民党の某氏は自説を披瀝するのに持ち時間のほとんどを費やし、肝心の証人への質問はほんの少し。私はアホです、と宣伝しているみたいなもの。選挙区の票目当てに質問に立ったらしいが、あれじゃ逆効果。小生ならあんなアホには決して投票しない。これを見てて思ったのだが皆さんもっとディベートの訓練が必要なのでは。最近は小中学校でディベートの授業を少しはやっているようだが。感情的にならずに論理だけで人と言葉のバトルをする。日本人はどうもこういうことに苦手のようだ。
 証言に立った証人の一人に経営コンサルタント会社の代表とかいうジイさんがいた。なんでもカリスマとかいわれていてジイさんが駄洒落をいうと、まわりの人間は面白なくても笑わなあかんらしい。
で、このジイさんがあちこちのホテルの開業を指導した。ホテルを建設した建設会社に法律違反の手抜きを指南したとされている。安くホテルが建てられるというんで、くだんのジイさんのもとには多数のコンサルティングの仕事が寄せられ、ええかげん建築の被害が広がったというわけ。
 以前から思っていたのだがコンサルタントとかいう商売ほど不思議なものはない。経営コンサルタント、宣伝広告コンサルタント、法律コンサルタント、などなど様々なコンサルタントがある。彼らはプロではない。問題のジイさんも経営コンサルタントと称してホテルの開業指導をしていたが、ジイさんは別にホテル経営のプロではない。経営コンサルティングのプロだが実際にホテルの経営に当たっているわけではない。こんなジイさんにホテル経営のプロが教えを受ける。以前いた電機会社にも生産管理のコンサルタントと称するおっさんが1年に何回かやってきて、現場をかきまわし、えーかげんなことをいっていく。現場視察の後は講演だ。毎回毎回同じはなしばかり。笑えない冗談まで同じところで同じ冗談をいう。で、会社のエライさんどもからは先生先生とたてまつられている。全く会社はこんなおっさんに金を払うほど金が余っているのか不思議だった。ほどなく経営が傾き従業員の多数をリストラする羽目になった。えらい先生のご指導を仰いでいるのに不思議だ。
 小泉首相のいう「民にできることは民」もいいが、なんでもかんでも「民」というのは考え物。コストを掛けずに利益を上げるためなら企業はなんでもする。そこにコンサルタントとかいう不思議な商売が発生する。今回の耐震偽装は氷山の一角にすぎないのではないだろうか。

(2006.1)

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