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とつぜんコラム No.57

雫石 鉄也


 2005年もいろいろ映画を観た。映画館で観たのもあるしDVDをTSUTAYAで借りてきたりテレビ放映されてたのもある。だから新しい作品ばかりではないことを断っておく。その中から5作品を紹介しよう。別に順位はない。

 スウィングガールズ 監督 矢口史靖 出演 上野樹里 竹中直人 本仮屋ユイカ
 元気のでる映画。成り行きでジャズを演奏する楽しさを知った女子高生たちがセーラー服をひるがえしながらスィングする。山形弁が効果的。若い集団が目標に向かってがんばるが梶原一騎的スポ根では決してない。スポ根は、何か/誰かに突き動かされてやっているがこの作品は自分らが楽しいからジャズをやっている。

 モリー先生との火曜日 監督 ミック・ジャクソン 出演 ジャック・レモン ハンク・アザリア
 入院中に病室のテレビで観た。取材に執筆にと多忙な日々をすごすスポーツライターのミッチは、大学時代の恩師モリー先生が難病で余命幾ばくもないことを知る。それからミッチは毎週火曜日にモリーの自宅へ「最後の講義」を聞きに行く。講義のテーマは「人生の意味」名優ジャック・レモンの遺作。やさしくて包容力があってちょっとおかしくって。こんな先生にめぐり合いたい。印象に残ったセリフ。「勉強なんかやめてしまえ。失うものは成績だけだ」

 スターウォーズ・エピソード3 シスの復讐 監督ジョージ・ルーカス 出演 ユアン・マクレガー ヘイデン・クリステンセン ナタリー・ポートマン  
 このコラムbT0で紹介したがSWファンで先行の5作観た人は必見。

 ジャズ大名 監督 岡本喜八 出演 古谷一行 財津一郎
 原作筒井康隆、監督岡本喜八、音楽山下洋輔。この3人が映画を創るとこういう映画になる。時は幕末。場所は東海地方のさる小藩。幕府側からも倒幕側からも協力を求められるが藩主は決断ができない。そんなおり海岸に黒人が3人漂着する。3人はジャズプレイヤーだった。音楽好きの藩主は3人にジャズを教わり、ひちりきの代わりにクラリネットを吹き出す。それから城中の家臣どもを巻き込んで城をあげての一大ジャムセッション。幕府がなんかいってきたら「ハイハイ」討幕派がなんかいって来ても「ハイハイ」世間の大騒ぎをよそにひたすらどんちゃかどんちゃか。そして時代は知らぬ間に明治へ。おかしくって哀しくって元気が出る映画。

 日の名残り 監督 ジェームス・アイボリー 出演 アンソニー・ホプキンス エマ・トンプソン  
 執事を演じたアンソニー・ホプキンスが名演。職務に忠実で誠実に主人に仕え屋敷の管理や宴席の取り仕切りの仕事を完璧にこなすスチーブンスは、女中頭のミス・ケントンを仕事の相棒として信頼している。同じ屋敷で年中顔を合わせている男女である。どうもお互い気があるみたい。しかしスチーブンスは仕事一途のとうへんぼく。良くいえばストイック。好きだなんておくびにも出さない。ミス・ケントンは待っているのだが。プロの執事の男の美学。二人の想いが痛いほど画面から伝わってくる。大人の名画だ。

(2006.3)

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