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とつぜんコラム No.61

雫石 鉄也



 ほっておいたら絶滅してしまうものは、ワシントン条約に記載された動植物ばかりではない。古くからの民話、伝承などは、後世に伝えようという有志の人たちがいなければ、いずれ絶滅するだろう。そういう文脈でいうと「子供の遊び」などはその最有力だ。「子供の遊び」といっても、いまどきの子供たちがやっているようなファミコンやプレステといったデジタルなものではない。小生たち団塊の世代がやっていた思いっきりアナログな遊びである。
 新聞の地方版の片隅に、その地方の年寄りが地域の小学生たちを集めて昔の遊びを教えている。という記事を時々目にする。現代の子供たちがゲームキューブを捨てて、ごっこ遊びに興ずるとは思えないが、小生の子供のころは、もちろんゲームキューブなんぞはない。学校の放課後の遊び場はもっぱら雑草が生い茂った近所の空き地だ。
 そのころ、友だちと遊んだ遊びを二つ紹介しよう。こういう遊びは子供たちの間で自然にできたもので、呼び名やルールは千差万別。神戸育ちの小生たちがよくやったのが「かかしけんぱ」と「サザエさん」というもの。
「かかしけんぱ」地面にかかしの絵を描く。かかしの足元少し手前の仕切り線から、かかしの脚、胴、腕、首、顔、頭の順に小石を投げ入れる。そして、脚、胴は片足でケンケンして、腕でパッと着地。首、顔、頭でケンケンパッ。飛ぶ時は小石が入っているパートは飛び越えなくてはならない。これが「かかしけんぱ」
「サザエさん」地面に直径6〜7m.の円を描く。その外側にもうひとまわり大きな円を描く。外側の円はぐにゃぐにゃと波打って描く。太陽を取り囲むコロナのような形。これを上から見ると漫画のサザエさんの顔を正面から見たようだからこの遊びの名前となった。遊び方は、2チームが内円の中と外円に陣取る。スタートの合図で外円チームが内円と外円の間を走る。内円チームは走っている外円チームを中から突き飛ばして走るのを妨害する。外円は波打っているから狭い所広い所がある。狭い所は危険地帯広い所は安全地帯というわけ。チーム全員が無事円を一周したら外円チームの勝ち。
 上記2種の遊びは合法的だから後世に残るかもしれないが、決して後世に残らないものもある。「青グリコ」「危険な黄グリコ」「最も危険な赤グリコ」というのがそれ。横断歩道の両端で相対しジャンケンする。負けたほうが「グ・リ・コ」といって3歩歩く。で、横断歩道を渡り終えたほうが勝ち。これを黄信号でやるのが「危険な黄グリコ」赤信号の時にするのが「最も危険な赤グリコ」。
 小生が子供のころは国道2号線でこんな遊びができた。自動車の数が少なかったのだ。今は絶対にこんなことはできない。あのころでも「青グリコ」でも途中で信号が変わって、車に急ブレーキをかけさせ運転手に怒鳴られた。こんな遊びは非合法だし現代では実行不可能。こうして考えると、昔はゲームそのものもルールも全部自分たちで作っていた。昔の子供たちの方が今の子供よりクリエイティブ能力が高いように思えるのだが。

 

(2006.7)

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